2. 研究の手法: 電波干渉計による精密な三角測量

我々が観測を続けているVERA(VLBI Exploration of Radio Astrometry)は、岩手県奥州市、鹿児島県薩摩川内市、東京都小笠原村、沖縄県石垣市の4ヶ所に設置された直径20mの電波望遠鏡からなる電波干渉計です(図2参照)。VLBI(超長基線電波干渉計)の技術を用いて天体までの距離を精密に計測し、天の川銀河の3次元立体構造を明らかにするためのプロジェクトです。国立天文台水沢VLBI観測所が鹿児島大学などと協力しつつ運用しています。VERAの建設は2002年に完了し、2007年から定常的に天体の距離計測を行っています。

図2:  VERAの望遠鏡の配置図。岩手県から沖縄県まで4ヶ所の望遠鏡で同時に観測することで、直径約2300 kmの日本列島サイズの大きな望遠鏡と同じ性能を発揮する。

 

VERAはこれまでに100天体を超える天の川銀河内の電波天体(メーザー源)の観測を終了し、そのうち約30天体について正確な距離と運動が報告されています。今回はこのうちVERAで観測した星形成領域(若い生まれたての星)の観測結果(19天体)と、さらに、米国のVLBI装置であるVLBAとヨーロッパのVLBI装置のEVNで得られた測量結果を合わせて、合計52天体を用いて、その距離と運動から天の川銀河の基本尺度を決定しました(図3、図4参照)。今回の解析は、最新のVERAの計測結果を加えて、世界に先駆けて50個を超える天体を用いて天の川銀河の構造を解析したものになります。

図3: 天の川銀河の位置―速度図上での天体分布。横軸が銀経、縦軸が視線速度で、黒い丸がこれまでに観測された52天体。背景の赤・緑・青色の背景は星の種となる分子ガスの分布で、観測した天体が分子ガスに沿って存在することがわかる。

図4: 天の川銀河を上空から見た想像図と、精密測量が行われた52天体の分布(赤印)。

 


 

 3. 結果:天の川銀河の基本尺度を正確に決定 へ  

 

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