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高速データ転送に成功!世界最大の学術情報基盤「SRCNet」の実現に弾み

国立天文台水沢VLBI観測所SKA1サブプロジェクト(SKAJ)と日本電気株式会社(NEC)は、導入に向けて共同実証を進めている超高速データ転送システム(Ultra-high-speed Data Transfer System: UDTS)を、SKA地域センターネットワーク(SRCNet・エスアールシーネット)の日本ノードに設置し、地球半周に及ぶ超長距離ネットワークを用いた大容量データ転送試験を実施しました。その結果、従来の転送方式と比べて数倍から数十倍高速なデータ転送を安定して実現し、SRCNetが要求する100 Gbps級の国際データ転送を実現できる見通しを示しました。

SKAJは、建設が進む世界最大の電波干渉計Square Kilometre Array Observatory(SKAO)を日本の研究者コミュニティが最大限活用できるよう、建設への技術貢献、人材育成、資金調達活動を進めています。また、SKAOが年間約1エクサバイトに達する観測データを世界中の研究者へ提供するための分散型データ基盤 SRCNet の開発にも、日本は重要な役割を担っています。SRCNetでは、SKAOと各国のデータセンター間で100 Gbpsのデータ転送性能を実現することが求められています。

しかし、長距離の高速ネットワークでは、ストレージ性能、CPUやネットワーク機器の処理性能、ファイアウォールなどの情報セキュリティ対策、大陸間光ファイバー網の経路、通信遅延など、多くの要因によって性能が制限され、実際のデータ転送速度は、回線の最大通信速度を大きく下回ることが一般的です。今回の実証では、名古屋大学と国立天文台三鷹キャンパスにUDTSを設置し、国立情報学研究所(NII)が構築・運用する学術情報ネットワークSINETの国際回線を利用してL2VPNを構築し、名古屋―東京―アムステルダム―ニューヨーク―ロサンゼルス―東京―三鷹 を結ぶ、通信経路の総延長が地球一周に匹敵するネットワーク環境を構成しました。この往復通信遅延(RTT)が400ミリ秒を超える大陸間通信環境で、SKAOで想定される規模の大容量データ転送試験を行いました。

その結果、従来広く利用されている通信方式や、SRCNetで採用が検討されている通信方式は、ファイルサイズや同時利用者数などの条件によって性能が大きく変動し、最も良好な条件でも通信帯域を十分に活用できないことが確認されました。これに対して、通信方式をUDTSにすると、転送するファイルのサイズや数、同時利用者数にほとんど影響されることなく、利用可能な通信帯域をほぼ最大限活用した高速・安定なデータ転送を実現しました。

今回の成果は、SRCNetが要求する100 Gbps級の国際データ転送性能を、UDTSは実際のシステム構成で達成できる可能性を実証したものであり、世界規模のSKAデータ基盤の実現に向けた重要な前進です。今後は海外のSRCNetノードとの接続試験や、SRCNet標準のファイル転送ワークフローとの統合実証を進め、SRCNetへの本格導入を目指します。

本研究の一部は、国立情報学研究所(NII)が構築・運用する学術情報ネットワーク SINET を利用して実施されました。

発表代表者 発表機関

  • 山下一芳 特任専門員(国立天文台水沢VLBI観測所SKA1サブプロジェクト)

共同発表者 共同発表機関

  • 赤堀卓也 准教授(国立天文台水沢VLBI観測所SKA1サブプロジェクト)
  • 市來淨與 教授(名古屋大学大学院理学研究科・素粒子宇宙起源研究所)
  • 嶋田創 准教授(名古屋大学情報基盤センター)
  • 平陽介 シニアマネージャー(日本電気株式会社・NEC Deutschland GmbH)

上:今回の実証で利用したSINET6国際回線の概要。東京―アムステルダム―ニューヨーク―ロサンゼルス―東京を結ぶ経路を利用した(出典:国立情報学研究所(NII)SINET6資料を基に作成)。下:実証試験のネットワーク構成。名古屋大学と国立天文台三鷹キャンパスに設置したデータ転送サーバをSINETのL2VPNで接続し、拠点間で高速データ転送を実施した。

名古屋大学および国立天文台三鷹キャンパスに設置された NEC UDTS サーバ。両拠点はSINETの100 Gbps L2VPN回線で接続されており、これらのサーバ間で超高速データ転送試験を実施した。