紹介

About VERA

VERAとは

VERAは、銀河系の3次元立体地図を作るプロジェクトで、2002年に観測網の建設が完成し、プロジェクトとしての観測が2022年まで行われました。その後、VERAの電波望遠鏡は、東アジアVLBI観測網(EAVN)の国際観測等で現在も活躍しています。

VERAプロジェクトの目標は、VLBIという電波干渉計の手法を用いて、銀河系内の電波天体の距離と運動をこれまでにない高い精度で計測し、銀河系の真の姿を明らかにすることです。国立天文台を中心に、多くの大学や研究所からさまざまな分野の研究者が参加し、2003年から2022年まで観測が行われています。

※VERAとは、「VLBI Exploration of Radio Astrometry」を略したもので、「VERA」はラテン語で「真実」を意味します。

距離を測る

天体の距離を直接測定するには、「年周視差」という量を測定します。地球が太陽の周りを1年かけて公転しているために、例えば夏と冬では天体の位置(地球から見た方角)はほんの少しだけ変化します。この天体位置変化が年周視差です。もちろん人間の目には見えない大変小さい量です。

VERAプロジェクトでは、銀河系内のたくさんの電波天体の位置を一年を通して超高精度で計測し、年周視差を測ることで、天体の銀河系内の位置を正確に求めます。

三角測量と年周視差

三角測量は、距離を測りたい物体を2箇所から観測し、その見かけの方向の違いから距離を割り出す方法です。2箇所から見たときの方向(角度)の差を、視差(あるいは三角視差)と呼びます。三角視差を用いた距離決定は日常生活でも良く利用され、その最も身近な例は人間の目です。人間は2つの目の間で発生する視差を利用して、物の距離を認識しているのです。

天体の距離を測定する時にも、三角測量は仮定のいらない最も正確な方法として利用されます(※三角測量以外の方法で求めた天体の距離は、星や銀河の明るさ、あるいは宇宙の膨張則など、なんらかの仮定の上で求めた間接的なものです)。

我々の住む地球が太陽の周りを1年かけて公転しているために、例えば夏と冬では天体の位置(地球から見た方角)はほんの少しだけ変化します。この天体位置変化を年周視差と呼びます。

年周視差と天体の距離は反比例するので、年周視差を観測することができれば何の仮定もなしに天体の距離を直接求めることができます。ただし、年周視差は人間の目には見えない大変小さい量で、例えば銀河系の中心にある天体を観測した場合、年周視差は約3000万分の1度という途方もない小さい値になります。

一方、VERAは、最先端の観測技術を駆使して、天体の位置を10マイクロ秒角(3億6千万分の1度)という超高精度で計測することができます。そして、天体の位置を、一年を通して超高精度で計測して年周視差を測ることで、天体の距離を正確に求めるのです。ちなみに、VERAの目標精度である10マイクロ秒角は、月面上の置いた1円玉を地球から見たときの見かけの大きさに相当します。

※マイクロ秒角は、100万分の1秒角を意味します。また、1秒角は3600分の1度です。

>>年周視差計測の歴史

地球が太陽の周りを公転しているために、天体の位置はわずかながら季節によって変動します(年周視差)。VERAは、天体の位置を正確に測ることでこの変化を検出し、その大きさから天体までの距離を求めます。

VERAの成果

VERAは100天体を超える天体の年周視差と運動を測定しました。さらに、米国のVLBAでも同様な観測が行われており、その成果を合わせて、銀河系の渦巻きを描き出すのに適している星形成領域の銀河系内の分布をまとめたものが以下になります。図にあるように、銀河系の回転運動や渦巻き構造が見えており、これらの計測から銀河系中心までの距離や、太陽系近傍での銀河系の回転速度といった重要な定数が精度よく測定されています。

「VERAプロジェクト20年の成果がまとまる
− 国立天文台水沢120年の歴史が達成した位置天文学の高精度化 −」
https://www.miz.nao.ac.jp/veraserver/hilight/20201125_catalog/

図はこちらです。

同じ色の矢印で表している天体は、同じ腕に所属している。従来の想像による渦巻腕(想像図とそれに重ねて描いた黒い曲線)と今回の直接観測による渦巻腕に沿った天体の分布や回転運動がよく一致していることが明らかになりました。

特色「2ビーム観測」

VERAの最大の特徴は、2つの天体が同時に観測できる「2ビーム」望遠鏡です。

これまでの1ビーム観測では大気の揺らぎのために天体の位置を正確に測定することができませんでした。VERAでは隣接する2つの天体を同時に観測することで大気揺らぎを打ち消し、位置の精密測定を可能にします。(このような観測手法を相対VLBIといいます。)

※2ビーム同時受信が可能な電波望遠鏡は、天文観測用としてはVERAが世界で唯一のものです。

従来のVLBI観測では大気の揺らぎが位置決定を難しくしていましたが、VERAでは近接する2つの天体(主にメーザー源とクェーサー)を同時に観測することで2つに共有な大気揺らぎを打ち消して、位置を精密に測定することができます。

対象天体

VERAが観測する主要な天体は、銀河系内のメーザー源です。

メーザー源とは、特定の周波数で非常に強い電波を放出する天体で、その多くは生まれたばかりの若い星や年老いた星です。

VERAが観測するのは、メーザーの中でも明るい水メーザーや一酸化珪素メーザーで、すでに1000個程度のメーザー天体が銀河系の中で知られています。

また、VERAでは2ビーム観測時の位置基準天体として、銀河系外の電波銀河やQSOも観測します。

青が星形成領域(若い星が生まれている領域)、赤が晩期型星(年老いた星)

右下の領域はVERAでは観測できない南天のため、天体が抜けています。

アレイと観測局

VERAの観測アレイは、水沢入来石垣島小笠原の各4局からなります。

この4つの観測局を組み合わせて観測すると、直径2,300kmの望遠鏡と同じ性能を発揮することができます。

国内電波望遠鏡群

観測装置

VERA観測局のシステム構成は下図のようになっています。

各部をクリックすると、各装置の詳しい説明を見ることができます。

VERA観測局システム構成図