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VERAとは天体の距離を測る目標精度特徴観測する天体
他プロジェクトとの連携SKAパスファインダーVERA年表

VERAとは

天体の距離を測る

年周視差計測の歴史

 年周視差が最初に検出されたのは1838年のことです。ドイツの天文学者ベッセルが、白鳥座61番星の年周視差を初めて検出しました。白鳥座61番星は太陽に非常に近い恒星の一つで、その距離は11光年です。この発見の直後には、ベガ(距離25光年)、ケンタウルス座アルファ星(距離4.4光年)の年周視差も検出されました。その後、20世紀にかけて地上の望遠鏡を用いて多数の星の年周視差計測が行なわれました。しかし、地上からの観測では大気が邪魔をして精度が思うように上がらず、年周視差法で計測可能な距離は数10光年にとどまっていました。

 この状況を大きく変えたのは、1989年にヨーロッパ宇宙機関によって打ち上げられたヒッパルコス(HIPPARCOS)衛星です。ヒッパルコスは光学望遠鏡を搭載した衛星で、大気のない宇宙空間で精密な測定を行い、およそ500光年までの距離を年周視差法によって測っています。

 さらに、1990年台になると、超長基線電波干渉計(VLBI)という特殊な技術を用いて電波源の位置を精密の決定することが可能になり、これによって年周視差の測定精度もさらに向上していきます。1999年には、米国のVLBAという電波干渉計を用いてさそり座X-1という天体の年周視差が検出され、距離が9050光年と求められました。VLBAなどの干渉計では大気のゆらぎの影響を打ち消すために、スイッチング法という特殊な方法が用いられています。この方法は、観測したい星と位置基準となる星をすばやく切り替えながら交互に観測するというものですが、天体の切り替えに伴って観測時間の大部分が失われる効率の悪いものでした。

 このような問題を解決するために2002年には日本でVERAが建設され、2ビーム同時観測によって大気揺らぎを除去する画期的なシステムが世界で初めて登場しました。つまり、VERAは年周視差計測に最も特化された装置であるといえます。
これによって、今回報告したように17250光年の距離を年周視差で計測することに成功し、これまでの到達距離の記録をほぼ2倍にして、年周視差計測記録の先頭に日本が立つことになりました。また、Orion-KLのような重要天体の最も精度の高い距離計測にも成功しました
今後もVERAの活躍によって多くの天体の距離が正確に決定され、銀河系の真の姿を描き出すことが期待されます。


図1:年周視差法による到達距離の変遷(1838年〜現在)。クリックすると拡大します。


図2:VERAで距離が計測されたS269とOrion KLの銀河系内での位置を表す模式図



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