宇宙教育「東北地区リーダーズセミナー」
    開催報告

 

 宇宙教育に携わる指導者の育成を目指したリーダーズセミナーは、従来、財
団法人日本宇宙少年団(YAC)の分団リーダーを対象に行われていましたが、
現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)主催で広く一般市民へとその対象が拡大
されたものとなっています。YAC水沢Z分団が水沢VERA観測所を活動拠点として
いる関係から、今年度の東北地区のセミナーは共催団体でもある当観測所にて
平成18年12月16・17の2日間にわたって開催されました。参加者は約30名でし
た。
 初日に4コマの講義が行われました。YAC福岡分団の分団長でもある九州大学
教授の麻生茂さんは、宇宙教育の理念、目標、社会教育の中の位置づけについ
て話されました。「宇宙の子」、「科学の子」、「地球の子」を育てるという
理念の達成に必要なノウハウについて実例を交えながらの紹介がありました。
YAC仙台たなばた分団リーダーの荘司泰弘さんは、望ましいリーダー像につい
てご自分の体験に基づいて話されました。子供達の科学する心にいかにして
「火をつけるか」、用意された面白さから脱却するためにファシリテーターと
してどう関わるかなどについて説明されました。また、自分自身がかつてYAC
の団員であった経験から、子供がリーダーをどのような目で見ているかに触れ、
リーダー自身が宇宙に興味を持つ「熱い大人」でありたいと話されました。
YAC水沢Z分団のリーダーでもある現役教員の吉田智子さんは、子供の発達特性、
発達障害児への対応など児童理解について話されました。子供の体力・運動能
力の低下に対する警鐘、生活リズムの重要性などもダイナミックな語り口で説
明されました。YACさくら分団副分団長の浦野須磨子さんは子供の発達特性の
理解と危機管理・安全教育について話されました。社会教育指導歴35年の経験
を生かした話を交え、子供と関わる前に子供の特性を理解しておくことの重要
性を強調されました。

   麻生茂さんによる教材説明

         麻生茂さんによるクールな教材説明。

   吉田智子さんの児童理解の講義

      吉田智子さんによる熱のこもった児童理解の講義。

 2日目の午前は2コマの教材研究が行われました。最初に筆者が中華なべアン
テナを紹介しました。
本ニュースNo.136にも紹介されていますが、人工衛星の
軌道運動、アンテナの仕組み、電波の性質を身近な材料を使って学ぶプログラ
ムについて話しました。続いて麻生茂さんが模型ロケット、翼の働き、子供衛
星アイディアコンテストなどについて紹介されました。特に模型ロケットに対
する参加者の関心が高く、航空宇宙工学の専門家である麻生さんの説明にも力
が入っていました。

   中華なべアンテナ実演

           中華なべアンテナ実演中。

 午後は水沢VERA観測所の亀谷收さんの案内で所内の見学を行い、緯度観測所
時代から最新のVERAプロジェクトに至るまでの水沢の研究についても学びまし
た。最後に参加者に修了証が授与され(後日宇宙教育リーダー認定証も送付さ
れました)、無事閉会となりました。
 私は講師も務めましたが、むしろ講義を聞く立場の参加者として多くを学ん
だ非常に有意義なセミナーでした。YACのリーダーとして、また小学校低学年
の子供を持つ親としても、子供の理解、子供との係わり方について考える良い
きっかけを与えられたと思います。少ない文字数でこのセミナーの魅力を伝え
るのは難しいので、興味を持たれた方は来年度以降ご自分の地区で行われるリ
ーダーズセミナーに是非参加していただければと思います。
    「国立天文台ニュ−ス No.164より転載」<RISE推進室 松本晃治>