うるう秒について

 


2009年1月1日、午前9時(日本時間)丁度に閏秒(うるう秒)が挿入されます。
           (
国際地球回転及び基準座標系事業(IERS)中央局:英文)


閏秒はなぜ必要なのでしょうか?

 現在使用されている時系には、下記のように3つの種類があります。

・地球の自転に基づく時系:世界時(UT1)
・太陽系天体の運動(地球重心が太陽系重心の周りをまわる)に基づく地球重心に
 おける時系:力学時(TCG)
・地球表面(ジオイド)における時系(TT)とその実現である原子の放射に基づく
 時系:原子時(TAI=TT-32.184s)

 地球自転による時系である世界時は日の出、日の入りを通して日常生活と密着し
ていることから分かるように、天文観測により求められます。しかし、地球の自転
はさまざまな力学的な影響を受け変動するので時間の基準としては精度が不十分で
す。力学時(TCG)は一般相対性理論に基づく太陽系天体の運動から求める一様時
系なので理想的です。しかし、地球中心で直接時計面として実現することは不可能
でなので、地球表面における時系TTを使います。TTはTCGとは重力の影響により進
み方が少し違います。
 原子時はTTの実現値で原子の放射周波数を基準にして決められます。精度が高く
きわめて短い周期の積算で求めることができます。セシウム原子による秒が、1967
年の国際度量衡総会で正式に定義されました。1971年の国際度量衡総会では、国際
原子時(TAI)を定義し、原点を1958年1月1日0時0分0秒の平均太陽時と定めました。
国際原子時は定義された秒をもっとも正確に積算する時系です。現在は世界の各機
関の国際時刻比較によって約160台の原子時計データを国際度量衡局(BIPM)に集め
て決定されています。
 しかし、日常生活に用いる時刻は昼と夜の区別、春分、秋分など天文現象に依存
しています。国際原子時は平均太陽時と1958年の原点では一致していましたが、地
球が一回自転するのに要する時間が正確には24時間からずれることから、少しずつ
ずれていきります。そこで、日常生活に合うような原子時系、協定世界時(UTC、原
子時の一つ、各国の標準時として使用される時系)を作り平均太陽時と0.9秒以内に
一致するようにしました。協定世界時は各国の標準時として使用され、日常生活と
は合っていますが、国際原子時(TAI)とは刻々とずれていくために、閏秒を入れて
調整します。

 

 UTCとTAIのずれは、1月1日または7月1日の0時0分0秒UTC(日本時間午前9時)に必
要となったときに閏秒を挿入して合わせられます。

 1972年以降のUTC−TAIの時期と量を下表に示します。
           
 つまり、日常生活の時系は少しづつ遅れていることになります。これは地球の自転
が少しずつ遅くなっていることに起因します。月の引力などによる潮汐により海洋底
が摩擦を受け、地球の自転にブレーキがかかるのが主な原因と考えられています。

参考文献
世界時、力学時、国際原子時、協定世界時:国立天文台編理科年表平成20年版、丸善
株式会社、pp151-152.