海洋潮汐モデルの開発で
           第11回測地学会坪井賞受賞

 

 本台の松本晃治さんが、5月末の地球惑星関連学会合同学会の際に開催され
た測地学会総会において、第11回測地学会坪井賞を受賞されました。受賞の対
象となった研究は、「衛星高度計データに基づく高精度海洋潮汐モデルの開発」
というものです。
 海洋潮汐モデルを作成する方法として、観測データ(検潮、衛星高度データ)
をもとにして作成する方法と、力学モデルにより計算機シミュレーションで作
成する方法があります。松本さんは、力学モデルと観測データを組み合わせる
アシミュレーション(同化)技法を取り入れ、高精度の海洋潮汐モデルの作成
に成功しました。また、衛星高度データの解析では、多数の分潮成分を決める
際に悪条件化を避けるために、応答方の採用と流体核共鳴の効果をモデル化す
るなど、解析方法にも工夫が施されています。日本近海については特別に高分
解能モデルも作成されています。
 海洋潮汐モデルの開発に合わせて、潮汐荷重の計算プログラムの整備も行わ
れました。地表は海洋潮汐荷重の影響で常にcm単位で周期的な変位が生じてい
ます。mm精度に達しているいわゆる宇宙技術を用いた高精度の測位観測では、
海洋潮汐荷重の補正が不可欠になっています。
 松本さんの研究成果につては、本ニュースの2000年12月号に
研究トピックス
として取り上げられております。手っ取りばやくは、理科年表2003年版の602
ページをご覧下さい(2002年版までは、なんと1933年に作成された小倉伸吉の
図が採用されておりました。実に70年ぶりの改訂になります)。詳しい内容を
知りたい方は、J. Oceanogr., 56, 567-581, 2000 を、データやプログラムは、
http://www.miz.nao.ac.jp/staffs/nao99/index.html
をご覧下さい。
 なお、総会の際に予定していた授与式と記念講演は、ご本人が都合で総会に
出席できなかったために、残念ながら中止となりました。写真は水沢地区談話
会のおり、竹本測地学会長の代理として日置測地学会評議員から松本氏に坪井
賞を授与された時のものです。

   授賞式

 水沢で行った授賞式。左が松本晃治さん、右が日置幸介測地学会評議員

                 「国立天文台ニュ−ス No.121より転載」