東アジア 惑星科学・探査 夏の学校 2025 報告

2025-08-25

第7回目となる「東アジア 惑星科学・探査 夏の学校 2025 (SSPSEEA2025) 」(7月22日~26日)に4人の日本人学生と参加してきました。今年の開催地は中国の貴州省貴陽市で、中国科学院地球化学研究所が会場となりました。貴州省には少数民族の苗族が暮らしており、日本人にとっても大変興味深い地域です。標高1100メートルの高地にあり、中国でも有数の避暑地だそうです。訪問中も25℃前後の涼しさだった一方で、雨と曇天が続いて気持ちよく晴れることはまれでした。今年の6月には貴州省で洪水が起きているのですが、街中で水害の跡が目につくことは無かったです。

図1

今年の夏の学校のテーマは「火星の科学と探査」で、講師として米国ブラウン大学のJohn Mustard教授、イタリア・ダヌンツィオ大学の小松吾郎准教授、国家宙空科学中心のYang Liu教授をお招きしました。米国の火星探査の成果、地球における火星の類似地形、中国の火星サンプル回収計画などなどについて話題が広がり、参加学生も熱心に耳を傾けていました。2日半の集中講義に続いて、3日目午後に学生によるグループワークの発表がありました。4日目は中国が世界に誇る500メートルの電波望遠鏡(FAST)の見学に出かけました。以下に4人の学生の方から送って頂いた感想文を転記します。(以上 文責 竝木則行)

 

(内田雄揮さん)

講義やグループワークを通じて火星の火山活動、水の痕跡、生命居住可能性といった幅広いテーマについて深く学ぶことができました。火星地質の専門家とのディスカッションは、自身の研究への視野を広げる貴重な機会となりました。特に、含水鉱物や泥火山に関する最新研究に触れられたことで、探査ミッションの地質学的意義をより実感できました。

また、英語での国際的なグループワークは初めての経験でした。議論の方針を早い段階で明確にできなかったことが発表内容に影響し、英語でも率先して方向性を定めるリーダーシップの重要性を痛感しました。今後はこの反省を活かして英語力を強化し、より主体的にチームを導きたいと感じました。

図2

 

(竹内直之さん)

SSPSEEA2025には、惑星探査計画に関する理解を深めるとともに、異なる国や分野の学生・研究者と交流したいという思いから参加しました。

「火星探査の着陸地を考案する」というテーマで行われたグループワークでは、想定していた言語の壁に加えて、タスクの進め方に関する文化的な違いにも直面しました。英語でのコミュニケーションに苦手意識を持つ学生が多い中で、議論の進め方や役割分担をめぐって意見の対立が生じ、プレゼン資料の作成に取りかかるのが大きく遅れてしまいました。最終的に完成したプレゼンテーションは、自分としては納得のいくものにはなりませんでしたが、それ以上に貴重な経験を得ることができました。

また、今回の参加者の多くが地質学を専門としていたのに対し、私は惑星プラズマを専門としており、背景知識に大きな差がありました。そうした中でも、疑問に思った点については積極的に質問し、異分野の研究者と議論を重ねることができました。惑星科学の分野では、対象が共通でもアプローチは多様であり、今後も異なる分野の研究者と協働する機会が増えていくと考えています。今回のワークショップでは、そのような状況でお互いの背景を共有し、共通のテーマについて意見を交わすことの重要性を体感することができました

研究の現場では、異なる視点や考え方を咀嚼しながら共通の目標に向かう姿勢が必要だと思います。今回の経験を通して得た学びは、今後の学術的な協働や国際的な研究活動において、必ず役立つと確信しています。

図3

 

(杉本佳祈さん)

今回、夏の学校に参加を決めたのは、テーマが「火星の科学とミッション」だったからです。私は将来、研究者として有人火星探査に携わることを目標としており、火星ミッションに関する取り組みには常に意欲的に挑戦したいと考えてきました。また、惑星探査ミッションにおいては国際協調が欠かせないため、中国・韓国の学生と交流ができるこの夏の学校は非常に魅力的でした。そのため、参加が決まった時からこのプログラムを心から楽しみにしていました。

プログラム期間中は、外部大学の教授陣による火星に関する講義が一日を通して行われ、火星の地質、気候、ハビタビリティから将来のミッションに至るまで、幅広い分野を学ぶことができました。私は自身の研究で火星の地質を扱っているため、火星史における環境変化と地質の関係についての講義は特に興味深く、理解を深めることができました。さらに、以前からお会いしたいと願っていた教授が外部講師として招かれており、実際にお話しし、議論できたことは非常に貴重で有意義な時間でした。初日の夕方には、「将来の火星探査における着陸地点の提案」というテーマでグループワークの課題が出され、最終日(3日目)に発表を行うことになりました。1グループ6名で、日本人と韓国人が1名ずつ、中国人が4名という構成でした。全員英語はネイティブではありませんでしたが、互いに意見を伝え合おうと努力しながら議論を重ねていきました。グループワークにおいては、今どの段階にいるのか、ゴールまでにどのような作業が必要かといった意識をメンバー全員で共有することが非常に重要です。しかし、各々の意見もあるため、限られた時間内で合意形成しながら作業を進めていくことの難しさも実感しました。それでも、共通の目標に向かって深夜まで議論した時間は、とてもいい思い出です。そして最終日の発表を終えて、修了証を受け取ったときは、大きな達成感がありました。このプログラムを通じて、火星に関する知見を深められただけでなく、より良いグループワークを実現するために大切なことを、身をもって学ぶことができました。

今回、中国を訪れたことで、学生をはじめとする現地の方々のおもてなしにも感銘を受けました。美味しいローカルフードを味わい、天文望遠鏡の見学ツアーにも参加し、歴史的建造物や博物館も訪れることができました。こうした体験を通じて、中国の文化や自然に触れられたことは、学び以外の面でも非常に充実した時間となりました。非常に感謝しています。次に彼らが日本を訪れる機会があれば、私たちも心を込めてお迎えし、異文化交流をさらに深めていきたいと感じました。そして、この夏の学校の経験を経て、自身の博士課程での火星研究をさらに発展させ、将来の有人火星探査ミッションを一層活気づけることのできる研究者になりたいと、改めて強く思いました。

図4

 

(氏田蒼さん)

SSPSEEA2025を通じて、研究者としてステップアップできたように感じています。この感覚は、「火星探査の着陸地点を提案する」という課題をグループで協力して解決できたことと、初めて同年代の海外研究者と交流できたことの2つからきていると思います。初日に上記の課題が科され、その夜から休憩時間を使ってディスカッションやプレゼンの資料作りをしました。火星の地形は私の直接的な研究分野でない上、英語を使ってコミュニケーションをしなければならなかったため、初めて味わう苦労を経験しました。結果的には協力してプレゼンテーションまで完遂でき、安心と共に大きな達成感を感じました。また4日間という短い期間でしたが、そのような苦労を共にしたこともあり、最終日には研究室の仲間くらい仲良くなれたと感じています。今もなお彼らが海を超えた先で研究に励んでいると思うと、自分も頑張ろうと、強く思います。このステップアップを糧に研究に励み、いつか彼らと研究できる日が来ればいいなと思います。

図5

ー以上ー