ヘルメットを装着してアンテナの階段を登って来ました。ここはパラボラと地面の中間地点ですね。
ここで各種メーターをチェックします。受信機を冷やすためのコンプレッサーの圧力や受信機室の温度、大気の状態などチェック項目ごとに確認をして、気がついた事をファイルに記録しています。
分厚いファイルですね。異常がないかどうかは数値でわかるのですか?
はい。数値でわかりますが、数値として見えない部分も確認しています。さらに上に登りましょう。
アンテナの首のあたりまで登ってきました。ここは?
受信機がある上部機器室です。室内で何か変な音が聞こえないか耳を澄ませたり、受信機にちょっと触ってみて熱すぎないか注意しています。熱くなる箇所や温度が日によって全然ちがうんですよね。
熱を出していないか具合が悪くないか、まるで小さい子供の母親みたいですよね。臭いもチェックするんですか?
アンテナを動かすための機械がある下部機器室を点検するときなどは気を付けています。滅多にないことですけど、雪の重みで負荷がかかっているときは熱が出るせいか、いつもと違う臭いを感じることがあります。
数値による判断だけでなく、五感を使ってアンテナの状態を察知することが大切なんですね。
次はアンテナを水平回転させる車輪とレールです。
どんなところに気をつけて見るんですか?
汚れやゴミを見つけたら取り除きます。それと、今の季節は構造物の隙間を注意して見ます。隙間に雪が挟まって凍ってしまうとアンテナを動かすときに良くないんです。たとえばこういう箇所ですが…あっ!雪が挟まっている。
本当だ!ほんの1mmか2mmくらいの隙間ですけど、確かに雪が挟まって凍っていますね。
これは知らせないといけない状態ですね。ちょっと待っててくださいね。
…てきぱきと電話連絡されていましたが、大丈夫でしょうか。
はい、対応をお願いしたので大丈夫です。マニュアルを見て自分でできるものは対処しますが、どうにもならないときはより詳しい担当者を呼んで一緒に問題解決にあたります。
精密な点検があってこそ未然にトラブルを防止できるのですね。あらためて、この大きなアンテナが精密機器であることを実感しました。