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成果報告その他の報告

研究ハイライト

成果報告

VERAによる近傍星形成領域の距離決定III. ケフェウス座領域の分子雲の距離測定

VERAでは、太陽系から1 kpc(約3000光年)以内の、銀河系の中では比較的近い距離にある分子雲(星が生まれている領域)にあるメーザー源の距離測定もプロジェクトの1つとして進めています。

今回、この「近傍星形成領域プロジェクト」では3番目の天体となるケフェウス座領域の分子雲L1204Gの距離を、764+/-27 pcと非常に高い精度で計測することに成功しました。

これまでの研究では、L1204Gの距離は910 pc、あるいは文献によっては1300 pcと言われていましたが、実際にはそれよりも最大で60%程度の近い距離にあることが分かりました。このことを用いて、L1204Gの中で生まれつつある若い星IRAS 22198+6336の明るさや質量を計算し直してみると、IRAS 22198+6336は今まで考えられていたような「大質量原始星(太陽の8倍以上もの質量を持つ若い星)」ではなく、太陽の質量の5倍程度の「中質量原始星」であることが分かりました。

このように、天体の距離を精密に測ることは、恒星物理学の精密化が可能になるという意義もあります。

画像
(左)暗黒星雲L1204G周辺2度四方の可視光写真(Digitized Sky Survey 2nd (R)より)。中心付近の「暗黒星雲」でIRAS22198+6336が生まれています。写真中央下の三日月型の明るい星雲は、活発な大質量星形成領域として有名なS140という星雲(HII領域)です。
(右)L1204Gにある若い星IRAS22198+6336の水メーザーの分布。十字の場所に中質量(太陽の5倍程度の質量)の原始星があり、その周囲に様々な速度の水メーザーが分布しています。これらのメーザーの年周視差計測により、距離を764+/-27 pcと精密に決定することができました。

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