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成果報告その他の報告

研究ハイライト

成果報告

いて座腕までの距離を正確に決定

銀河系には、いくつかの渦巻き状の腕があります。そのうちのひとつ、いて座腕にある星形成領域 G14.33-0.64 への距離計測に VERA が成功しました。そして、このことにより銀河系のいて座腕までの距離も正しく見積もられました。

これまで G14.33-0.64 までの距離は、ある仮定の元に大ざっぱな推定がされていました。それは、銀河系の回転速度をあらかじめ仮定し、天体が銀河系回転に沿って動く方向と太陽から見たその天体の方向を考慮して、その天体の視線速度から距離を求める方法です。この方法で求めた距離を「運動学的距離」と言います。
しかしこの方法では、銀河系回転の仮定が実際の値からずれていると、運動学的距離も実際の距離の値から大きく外れてしまいます。

一方 VERA は三角測量法により仮定なしに直接天体への距離を測ることができます。VERAは G14.33-0.64 にある水分子からの強いメーザー放射を 2006年から2008年にかけて合計11回観測しました。そして、G14.33-0.64 の距離を 1.12+-0.13 kpc であると決定しました。
これを光年に直すと、約3200光年から4100光年の範囲ということになります。この結果は、これまで G14.33-0.64 の距離として採用されて来た運動学的距離の半分以下の値です。

このことはすなわち、銀河系のいて座腕はこれまで我々が考えていたよりもずっと太陽系の近くに横たわっている可能性を示します。

今後、G14.33-0.64 を含めた、いて座腕内にある天体への距離計測が進むことにより、いて座腕への正しい理解がさらに進むことでしょう。

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これまで銀河系のいて座腕は青い曲線に沿って横たわっていると思われていました。しかし、VERAにより G14.33-0.64 の正しい距離が判明し、さらにいて座腕はもっと太陽に近い、赤い曲線に沿っていることが示されました。


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