研究ハイライト
成果報告
マイクロクエーサー Cyg X-3 のフレアと状態遷移をキャッチ
韓国の天文宇宙研究院(KASI)と日本のVERA関係者を含む国際チームは、マイクロクエーサー Cyg X-3 の2007年5月〜6月に発生した電波フレアの観測に成功しました。
Cyg X-3 は、はくちょう座にあるX線連星のひとつで、ブラックホールまたは中性子星のコンパクトな天体を含む連星系と考えられています。また、Cyg X-3 はX線や電波で激しい変動を示すことが知られています。
(左図はX線連星のイメージ 出典:Wikipedia)
今回電波フレアを観測した時期のX線観測では、ウルトラソフト状態からハード状態へのX線スペクトルの状態遷移が見られました。
このような遷移が起こる際にはジェットが放出される可能性が指摘されており、そのタイミングでの電波観測が期待されていました。今回の観測はまさにそうした状態遷移が起きる際の電波観測になります。
今回の観測では数時間スケールで Cyg X-3 の電波強度が増大するのが検出されたのに加え、強度変動に伴って構造が変化している可能性も示唆されました。
これらの結果は、マイクロクェーサーの状態遷移にともなうジェット放出と考えて矛盾のないものになっており、このような遷移の際に実際にジェットが放出された可能性が高いと考えられます。

図1:2007年5月〜6月に発生したフレアの電波とX線による光度曲線。
縦軸が強度、横軸が時間経過を示す。最上段の(a)中央部がVERAによるもの。

図2:2007年5月29日にVERA4局(6基線)で観測された強度。
横軸は時間経過を示す。点線は。21〜24UT間に発生した小さなフレアを検知している。
関連論文
- J. S. Kim, 2013, AJ, 772, 41, VLBI OBSERVATION OF MICROQUASAR CYG X-3 DURING AN X-RAY STATE TRANSITION FROM SOFT TO HARD IN THE 2007 MAY--JUNE FLARE