研究ハイライト
成果報告
VERAとALMAの連携でオリオンKL 水メーザーバーストのメカニズムに迫る
国立天文台の廣田朋也助教が率いる研究チームは、VERAとALMAを連携して用いた観測により、オリオンKLで発生した水メーザーバーストのメカニズムに迫りました。
オリオンKLはオリオン大星雲の中心にある赤外線星雲で、太陽の10倍以上の質量を持つ巨大な若い星など、多くの星が誕生しつつある活発な領域です。この領域ではスーパーメーザーと呼ばれる大きな水メーザーバーストが十数年ごとに発生することが知られています。
研究チームは、2011年3月から発生した水メーザーバーストに対して、VERAによるモニタ観測を行いました。それにより2011〜2012年の間に3回のピークを捉え、2012年6月には最大強度(135000Jy)に到達したことがわかりました。(図1)
また、水メーザーバーストを起こすガスが、電波源I(アイ)から離れて南西へと向かっていく運動を検出しました。電波源Iは、オリオン大星雲にある生まれたばかりの大質量星です。
さらに、ALMAを用いた観測によって、水メーザーバーストの発生位置が、コンパクトリッジという領域のギ酸メチル(HCOOCH3)および連続波放射のピーク位置と近いことがわかりました。(図2)
これらのことから、水メーザーバーストが発生するメカニズムは、電波源Iからのアウトフローがコンパクトリッジにぶつかることにより、メーザーが明るくなるためと考えられます。
図1:VERAによる水メーザーの強度変化。横軸が時間変化、縦軸がエネルギー強度を示す。
図2:ALMAによる電波画像(321GHz:ギ酸メチル)。
左上部の白い丸が電波源I。中央やや右下の黒い×印がバーストの発生位置。
図3:ALMA望遠鏡パノラマ写真(出典)
関連論文
- T. Hirota, 2014, PASJ, 66, 6号出版予定, VERA and ALMA Observations of the H2O Supermaser Burst in Orion KL