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研究ハイライト

成果報告

大質量原始星候補G353.273+0.641から吹き出す水蒸気ジェットの時間変動に迫る

画像
G353.273+0.641の中間赤外線画像、中心の明るい点が原始星候補天体。白い等高線は星間塵からのサブミリ波電波強度。 (出典)

国立天文台の元木業人氏(前山口大学振研究員)を中心とした研究チームは、VERAおよび北海道大学苫小牧11m電波望遠鏡を用いた長期モニター観測によって、大質量原始星候補G353.273+0.641から吹き出す双極ジェットの時間変動を詳細に捉えることに成功しました。

観測対象であるG353.273+0.641は太陽の10倍程度の質量を持つ非常に若い大質量原始星候補(※1)で、同チームの研究から非常に高速な双極ジェットを吹き出していることが知られていました(図1)。
 ※1:原始星の可能性がある天体。大質量星は成長が早くて原始星段階のものが珍しく、判別も難しいためこのように呼ばれる。

研究チームは2008年から2012年に渡ってVERAと北海道大学苫小牧11m電波望遠鏡を組み合わせて、ジェットに付随する水メーザーの長期モニターを行いました。
その結果、G353.273+0.641に付随するジェットが不連続に繰り返し吹き出していることが明らかになりました。吹き出しは4年間で4度観測され、その度にジェット根元付近の構造が変化していることが確認されました(図2)。また中心星の近傍100AU(※2)程度の領域で定常的に水メーザージェットの加速が起きていることも判明しました(図3)。
 ※2:1AU=約1億5000万km(地球と太陽の平均距離)

大質量原始星からのジェットに対してこのような間欠的な時間変動を直接捉えたのは世界初であり、今後の詳細観測によってジェットの駆動・加速機構や星周環境への影響、ジェットの駆動源となる降着流の性質などについて理解が進むと期待されます。

fig.1
図1:G353.273+0.641から吹き出す双極ジェット。
色付きの点はジェットに付随する水メーザー源の分布と視線速度を表す。
等高線は中心星周囲に分布する高温の星間塵からの放射 (出典: Motogi et al. in prep)。

fig.2
図2:VERAによって得られたジェット根元の空間構造。
2008年から2012年の間に4度の吹き出しが捉えられており、その衝撃波によってシェル状に水メーザーが繰り返し形成されている様子が見られる。

fig.3
図3:北海道大学苫小牧11m電波望遠鏡によって捉えられた水メーザージェットの加速。
縦軸はジェットの速度、横軸は2008年初日から数えた観測日を表す。
(グレーの縦縞は望遠鏡のメンテナンスなどで観測データがない期間。)



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