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成果報告その他の報告

研究ハイライト

成果報告

VERAが大質量星形成の理解に貢献 〜S255でジェット駆動のバウショックを観測〜

画像
Spitzer望遠鏡で撮られた, S255星形成領域(赤外線3色合成図). 中心領域は, 天体が明るすぎてサチレーション(輝度飽和)している.
(提供:NASA/ IPAC Infrared Science Archive)

鹿児島大学のRoss A. Burns氏を中心とした研究チームは、VERAを用いて大質量星形成領域S255の水メーザー観測を行い、S255領域でアウトフロー(物質の流出)、およびU字形のメーザー分布を検出しました。
この分布は、低質量星形成領域でよく使われる、ジェット駆動バウショック(※1)モデルで上手く再現されました。

「大質量星形成は低質量星形成と同じ仕組みなのか?」というのは、天文学における大きなテーマです。
大質量星は低質量星に比べ数が少なく、これまで観測的研究があまり進んでいませんでした。

研究チームは大質量星形成と低質量星形成の関係を明らかにするため、2008年11月〜2010年8月にかけ、VERAを用いて延べ12回の観測を、大質量星形成領域S255に対して行いました。
その結果、大質量原始星の周りで、アフトフローおよびU字形の分布を得ることに成功しました(図1)。さらにU字形の分布は、ジェット駆動のバウショックモデルを使って、よく再現できることも判明しました(図1(右)の実線)。

今回の観測結果は、低質量星形成領域で見られるジェット駆動のアウトフロー(開口角が絞られたアウトフロー)が、大質量星形成領域でも見られることを示す、重要な観測結果です。
今後VERAで他の大質量星形成領域も観測することで、大質量星形成と低質量星形成に関する個々の物理過程の共通点・相違点が、解明されることが期待されます。


※1:超音速で運動している物体が、亜音速に減速される場所で発生する、U字形の衝撃波。良く知られた例として、太陽風が地球の磁気圏に入る所で、バウショックが観測されている。

fig.1
図1:VERA の観測結果。十字が、大質量原始星(星の赤ちゃん)S255-SMA1 の位置。
矢印が運動の向きで、色は視線方向の速度(青色が観測者に向かってくる)。
右図は左図を一部拡大したもの。黒色の実線が、ジェット駆動バウショックモデルを示し、
観測された空間分布と良く一致している。
(提供:Burns et al. 2016, 「英国王立天文学会 月報紙」より転載)


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