研究ハイライト
成果報告
KaVAで活動銀河核ジェットの運動を捉えることに成功
M87と中心からのジェット (出典:NASA and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA))
国立天文台水沢VLBI観測所の秦和弘助教を中心とした研究チームは、日韓合同VLBI観測網(KVN and VERA Array; KaVA)を使って、活動銀河核M87の高頻度モニター観測を行い、高質な電波マップから電波ジェットの高速運動の様子を捉えることに成功しました。
この研究は、山口大学の新沼准教授らによって達成されたKaVAによるM87の電波撮像から、さらに発展したM87のモニター観測です。2013年12月から2014年6月にかけて、2〜3週間おきに観測を行いました。
半年の間、全10回に渡ってジェットの運動を観測することにより、ジェットが徐々に加速する様子を捉えました(図1)。この結果、活動銀河核ジェットの詳細な構造の進化を研究するために、KaVAが重要な装置であることを実証しました。
2016年から実施しているKaVA大規模プログラムでは、更に詳細なモニター観測が行われています。本研究は、それに先立つ重要な成果を挙げました。
今後は、KaVA大規模プログラムによって更に多くの観測データを蓄積することで、巨大ブラックホールが駆動するジェットについて、より詳細に加速・生成メカニズムが明らかになると期待されます。
図1 (左図):M87のジェットを横向きにして観測日ごとに並べ、ジェットのコンポーネント A, B, D, E が、時間とともにどのように動くかを調べた。
図2:ジェットのコンポーネントごとに、コアC (電波で一番明るい部分) からの距離を図示した。縦軸が距離で、横軸は時間。
コアに一番近いコンポーネントAと比べて、一番遠いコンポーネントEが、速くコアから遠ざかっている様子がわかる。
関連論文
- Hada et al. (2017), PASJ, in press, “Pilot KaVA monitoring on the M87 jet: confirming the inner jet structure and superluminal motions at sub-pc scales”