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成果報告その他の報告

研究ハイライト

成果報告

生まれたての活動銀河核ジェットの吹き溜まりが運動する様子を捉えることに成功!

ペルセウス座にある3C84は、中心に位置する巨大ブラックホール(※1)の近傍からジェットを噴出する、電波銀河のひとつです。普通の電波銀河とは異なり、間欠的にジェットを噴出しているため、電波ローブと呼ばれるジェットの吹き溜まりと考えられる構造が様々な空間スケールで複数存在しています(図1)。そのため、ジェットと電波ローブがどのように形成され、成長していくのかを調べる上で重要な天体です。

これらの構造のうち、2005年に生まれたと考えられる新しい構造(C3: 図1右)を、VERAでモニター観測した結果が、元北海道大学の日浦皓一朗氏らによって公開されました。2007年10月から2013年12月までの6年2ヶ月にもわたる本モニター観測は、1ヶ月以内の間隔で実施され、全部で80回にも及びました。

fig.1
図1:3C84 の電波画像 (※2)。観測周波数は左から 332 MHz、22 GHz、43 GHz。それぞれの空間スケールで、ジェットの吹き溜まり構造「電波ローブ」が見られる。

この観測データを使って、銀河中心の巨大ブラックホールが位置すると想定される場所に対して、新構造がどのように運動するかが測定されました (図2: 青色)。この結果から、6年の観測期間中に光速の40%程度という速度で運動していることがわかりました。

これまでの研究から、生まれてから数千年程度の電波ローブは光速の数10%程度で運動することや、生まれてから10万年程度は定速で運動を続けることが知られていました (※3)。これらと日浦氏らの研究結果から、この新構造が電波ローブに分類できること、生まれてほんの10年以内の電波ローブでも、すでにその進化の系譜を辿っているということがわかったのです。

また、日浦氏らの研究では、2005年に噴出したジェットが古いジェットに追いついて相互作用したことで、新構造が形成された可能性が示されました。さらに、ジェットの軸がふらついていることから、ジェットの根元にあるガス降着円盤自体がふらついている可能性も示唆されています。今後も生まれたてのジェットと電波ローブについての研究が行われ、その形成・進化について理解が進むことが期待されます。

fig.2
図2:中心ブラックホールが位置すると考えられる場所 (C1) に対して、それぞれの構造(赤・青・緑)がどのように運動しているかを表す。本研究で着目している新構造(C3)は、青色で表されており、時間とともに黄色矢印に従って運動している。背景の等高線は、本モニターの最終観測時(2013年12月)の電波での輝度分布を表す。


※1: 質量が太陽の100万倍から10億倍程度のブラックホール。多くの銀河の中心に位置している。

※2: 下の3編の論文より図を引用。
- Pedlar, Ghataure, Davies, Harrison, Perley, Crane, & Unger, (1990), MNRAS, 246, 477, “The Radio Structure of NGC1275”
- Walker, Dhawan, Romney, Kellermann, & Vermeulen, (2000), ApJ, 530, 233, “VLBA Absorption Imaging of Ionized Gas Associated with the Accretion Disk in NGC 1275”
- Suzuki et al., (2012), ApJ, 746, 140, “Exploring the Central Sub-parsec Region of the γ-Ray Bright Radio Galaxy 3C 84 with VLBA at 43 GHz in the Period of 2002-2008”

※3: 参考文献は下の二編。
- Nagai, H., Inoue, M., Asada, K., Kameno, S., & Doi, A., (2006), ApJ, 648, 148 “The Kinematic and Spectral Ages of the Compact Radio Source CTD 93”
- Kawakatu, N., & Kino, M., (2006), MNRAS, 370, 1513 “On the dynamical evolution of hotspots in powerful radio-loud active galactic nuclei”


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