中国からの学生さんが3週間滞在しました。

2020-03-05

総研大 天文科学専攻の冬の学校として、中国 武漢大学の学部4年生、ガオ・ウートン(高梧桐)君をRISE月惑星探査プロジェクトで受け入れました。ガオ君は2020年1月11日から29日まで国立天文台 三鷹キャンパスに滞在し、筆者と「はやぶさ2」レーザー高度計データを使って、地形図を作成する研究を行いました。短い共同研究でしたが、地形基準面の考え方や、地図投影法、他の小惑星との比較、論理の組み立てについてじっくり深い議論ができたと思います。初めての海外で、到着直後は大変緊張していた様子でしたが、慣れてくるにつれて積極的に自分の意見をぶつけて来るようになり、小惑星探査のデータ解析手法を貪欲に吸収していました。筆者にとっても、あらためて地形データについて基礎から考え直す良い機会になりました。今回の共同研究で、若い力がすくすくと伸びている中国の惑星科学分野が日本にどんどん迫ってきている事を痛感しました。下に、ガオ君が帰国後に送ってくれたメールの和訳と本文(英語)を、本人の了承を得てコピーします。

 

※(日本の探査データの利用について) 「はやぶさ2」レーザー高度計データには、未公開の情報も含まれているので、ガオ君のデータ利用は国立天文台キャンパス内のみとし、元データのキャンパス外持ち出しは許可しないこととしました。ただし、解析結果からガオ君自身が作成したグラフと表は中国に持ち帰って、筆者らに事前通知の上、学会等で発表することを認めています。

 

※(武漢市からの訪問者受け入れについて) ガオ君の受け入れを決めたのは2019年11月で、新型コロナウィルスが日本に知られる前でした。1月に来日した時点では武漢市での感染が日本でも報道され始めていましたが、当時は感染者には発熱や咳の自覚症状があらわれると考えられており、ガオ君にはいずれの症状も認められませんでした。中国政府による武漢市の封鎖が実施される前であり、日本もまだ特定地域からの入国拒否を行っていませんでしたので、予定通り国立天文台へ受け入れることとしました。国立天文台滞在中にはガオ君本人は勿論、同室、隣室のRISE月惑星探査プロジェクトメンバーの健康状態にも注意を払いました。ガオ君の帰国後4週間となりますが、プロジェクトメンバーとその家族の健康状態は良好です。                                (並木則行)

 

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中国の武漢大学で地理情報学を専攻している学生のガオ・ウートンと申します。今年1月、私は研究のために約20日間、国立天文台に滞在し、並木教授のご指導のもと、リュウグウ表面上のクレーターの測定をおこないました。松本准教授によるLIDAR地形データを使用し、データの前処理、クレーターの識別、深さと直径の測定を完了し、最後に、セミナーで成果についての報告をしました。

 

国立天文台での経験は、私にとって有意義なものでした。これまでの私の研究は軌道決定に関するもので、クレーターの調査は私にとって未知のものでした。しかし、並木教授の助けを借りて、自ら研究を終え、多くのことを学びました。研究をしている中で、並木教授には多くのことを教えていただきました。論文について私と話し合い、多くの貴重な提案を下さり、私の考えの実現に尽力していただきました。また、科学研究における厳密さの必要性を教えてくださいました。

 

RISEプロジェクトのすべてのチームメンバーに感謝します。私は国立天文台で彼らと楽しい時間を過ごしました。一緒に昼食をとり、セミナーで議論し、有意義な話をしました。私が日本に来るのは初めてだったのですが、秘書の上村さんの助けを借りて東京を旅行し、美しい景色を楽しみました。また、美味しい日本食を紹介してくれた西山さんにも感謝します。最後になりましたが、今回の滞在を助成していただいた総研大/国立天文台にお礼を申し上げます。

 

I am Gao Wutong, a student major in geomatics in Wuhan University, China. This January I visited NAOJ and studied there about 20 days. Under the guidance of Prof. Namiki, I focused on the measurement of Craters on Ryugu. Using LIDAR topography data by Prof. Matsumoto, I finished the data preprocessing, identification of craters and measurement of their depth and diameters. Finally, I gave a report in the seminar about my work.

 

These days in NAOJ is a meaningful experience to me. Because my previous study is about orbit determination, investigation on craters was new to me. But with the help of Prof. Namiki, I finished my work myself and learned a lot. During my work, Prof. Namiki taught me a lot. He discussed with me about the papers, gave many valuable suggestions and made me realized my ideas. He also told me to be strict in scientific research, which helps me greatly.

 

I must thank all team members of RISE project. I had a great time with them in NAOJ. We had lunch together, discussed in the seminar and had a good talk. This is my first time to Japan and with the help of Secretary Uemura, I traveled Tokyo and enjoyed the beautiful sceneries. I also thank Nishiyama for showing me good Japanese foods. Finally, thanks to NAOJ for giving me this opportunity and the support during these days.

 

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ウートン君

送別会の写真 ガオ君がセミナーで研究発表を行った後に、送別会を行いました。奥の席、右から2番目がガオ・ウートン君です。この翌日に帰国しましたが、封鎖中の武漢市には戻ることができず、実家で待機していると聞いています。新型コロナウィルスが制圧されて、武漢市の日常が一日も早く元に戻ることを切に願います。