あるとき、出張先で地図を買い集めている自分にふと気づいたんです。それから意識して探すようになりました。出張で海外へ行くたびにちょっとずつ増やしていきたい。
今後はどんな研究をやっていきたいですか?
現在、電波観測で天の川銀河の地図作りをメインにやっているのはVERAとVLBAのふたつ。どちらも北半球からの観測なので、全体像を知るためには南半球からも観測したいと考えています。世界中にいろんなプロジェクトがあって、これからいろんなデータがたくさん出てきます。それを大航海時代って祖父江さんは言うんです。これからまさに位置天文研究の大航海時代だと僕は思っているんです。
天文に興味を持ったのはアポロの講演会でしたけど、天文学者になろうと思ったきっかけは、祖父江さんとの出会いです。
祖父江義明教授ですね。
ところで、研究者を志したきっかけは?
高3のときに、住んでいた長崎で、アポロ16号の宇宙飛行士のCharles M. Duke, Jr.さんの講演会があって聞きに行ったんです。この方、月面にご家族の写真を置いてきたそうなんです。それで、帰ってきて家族みんなで月を見たときに「あそこに、私たちの写真が見えるかい?」って言ったと。それを聞いたときに「かっこよすぎだろ!」って思って、これはもう天文をやるべきだ!と(笑)。それで、宇宙が学べるところに進路を決めようと思ったのが、最初のきっかけです。
かっこよさに惹かれて!
天の川銀河がどういう渦状の構造をしているのかを調べるのもVERAの科学目標のひとつです。僕が一番最初に距離測定に成功した天体はI05168というんですが、この天体は太陽から一番近い腕であるペルセウス腕に位置していることがわかったんです。しかも、その腕にそって特徴的な運動が見られるんですよ。回転成分を差し引いてもまだ運動成分が残って、数値的にも視覚的にも明らかに系統的なものが見られる。
うん、うん。
はじめに坂井さんの仕事と研究内容について教えてください。
はい、僕は国立天文台のプロジェクト研究員として、VERAプロジェクトのメインの科学目標である天の川銀河の3次元の地図づくりを進めています。VERAを使って天の川銀河の構造を調べたり、個々の恒星や天体の運動情報を使って、銀河の力学なども研究しています。
プロジェクトの進捗状況はいかがですか?
VERAや米国のVLBAを用いて、天の川銀河の3次元地図作りを行っています。銀河の中の渦巻き腕がお気に入りの構造で、腕の起源や進化の謎を解明することが研究テーマです。
趣味は旅先で現地の地図を集めたり、土地ごとの景色・人・言葉・食事・空気に触れることです。