今後はどんな研究をやっていきたいですか?
現在、電波観測で天の川銀河の地図作りをメインにやっているのはVERAとVLBAのふたつ。どちらも北半球からの観測なので、全体像を知るためには南半球からも観測したいと考えています。世界中にいろんなプロジェクトがあって、これからいろんなデータがたくさん出てきます。それを大航海時代って祖父江さんは言うんです。これからまさに位置天文研究の大航海時代だと僕は思っているんです。
「ガイア」というヨーロッパの位置天文衛星が2013年12月に打ち上がりました。「ヒッパルコス」の後継機で、天の川銀河の恒星についてVERAと同じような位置天文観測を行う衛星なんですが、観測精度がVERAと同程度で、科学目標もVERAと重なる部分があるんです。
ガイアは光の観測、VERAは電波観測。
そうですよね。もうすでにガイアの最初のデータが公開されて、そのデータを使った論文も出ています。それらの論文はガイアのデータだけで書かれているんですけれど、僕にはVLBIという強みがあるので、VLBIとガイアを組み合わせて研究したいと思っています。ガイアの最終的な観測カタログが出るのが2021年ごろ、VERAも2022年をめどに300天体の観測を終えます。ほぼ同じタイミングで最終データが出るので、そのとき2つを組み合わせて、最高精密な天の川銀河の立体地図作成に役立てたいと思っています。
楽しみですね。
はい。VERAをやることで最初にやっていた光の研究につながってくるなんて、おもしろいです。VERAを選んだときに「光はもうやめたんだ」と思いましたが、やっぱり光のデータが必要になって、また光の研究ができるようになった。おもしろい出会いです。僕は「出会い」によってできている感じですね。
そんな「出会い」によってできている坂井さんにとって、VERAとは?
いままで僕は良い出会いに恵まれて、いろんな人にサポートしてもらいながらやってきました。だから、自分にとってVERAとは、人生の中における良い出会いです。
素晴らしいです!坂井さん、どうもありがとうございました。
VERAや米国のVLBAを用いて、天の川銀河の3次元地図作りを行っています。銀河の中の渦巻き腕がお気に入りの構造で、腕の起源や進化の謎を解明することが研究テーマです。
趣味は旅先で現地の地図を集めたり、土地ごとの景色・人・言葉・食事・空気に触れることです。
VLBAは、アメリカ国立電波天文台が運用する電波望遠鏡。アメリカ国土全体に10台のパラボラアンテナを配置。世界最大のVLBI専用システムである。
欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡。天の川銀河内外の約10億の星の位置などを、ヒッパルコスの100倍の精度で測定する。
1989年に欧州宇宙機関(ESA)によって打ち上げられ1993年まで運用された世界で最初の位置天文衛星。