第10回目の意中の人は
山内彩さん

考古学か天文学か、究極の選択

マダム

VERA様様という人生のきっかけ、山内さんが天文学に興味を持ったのはいつですか?

山内

中学生の頃、NHKスペシャルで「銀河宇宙オデッセイ」いう番組がありまして、ビデオを全巻買ってもらったほど好きでした。でも、じつをいうと考古学も好きだったんです。地元が福岡市なので、となりの(当時)糸島郡(現:糸島市)に伊都歴史資料館(現:伊都国歴史博物館)へ八咫鏡(やたのかがみ)を見に行ったりしていて。

マダム

古墳とかもお好きで。

山内

はい好きです。ところが高校2年になると理系クラスへ行きますか、文系クラスへ行きますかってなりますよね。私にとっては天文学者になりたいか、考古学者になりたいか、という選択に等しかったんですが、受験で文転は可能だろうけれど、理転は無理だろうと思って理系に進んで、受かったのが東京理科大学の物理学科です。

マダム

物理学科で天文学を学んだんですか?

山内

いえ、量子力学の勉強ばかりやってました。

マダム

あれれ?

山内

量子力学の先生の授業が良かったんです。宇宙のゼミも見学したんですが、その量子力学の先生が「卒論の研究室は研究のしかたを勉強するところで、本当にやりたいことがあれば院に入ってからやればいい」とおっしゃったので、その先生の研究室に。

華麗なる紆余曲折

マダム

その後、九州大学の大学院へ。

山内

はい。大学院で研究はしたかったんですけれど、とくに天文学者になる気はなくて、修士を卒業したら地元の福岡で公務員になるつもりでした。

ところが、修士1年の5月に国立天文台の人が「電波天文学しませんか」と、誘いにきたのがきっかけで、九州大学に籍を置いたまま修士課程2年から博士課程3年まで4年間、野辺山へ行きました。

マダム

公務員どころか、どっぷり研究者の道を歩んでます。

山内

はい。野辺山へ行くかどうかのときにスゴく考えました。野辺山にいったらとても修士だけで終わりそうにない。そもそも行った瞬間に「これはもう福岡には帰れないんじゃないか」と。たとえ天文で博士号をとったとしても福岡での就職は難しい。もうその時点で覚悟を決めて野辺山へ行きました。

マダム

腹をくくったのですね。そして野辺山で博士号をとって冒頭へと続くわけですね。紆余曲折を経て、いま子供のころ夢中になった世界の発展に尽くしている。夢を叶えた女性として、若い世代に向けてメッセージをもらえませんか。

山内

そうですね、入った大学がゴールではないんですよね。大学卒業後にがんばって軌道修正してる方をいっぱい見ていますし、むしろそこからの方が大事だと思います。

マダム

励みになるお話、どうもありがとうございました。これからのご活躍に期待しています!

山内 彩
氏名
山内 彩 やまうち あや
出身地
福岡県生まれ
紹介

大学院生のころは国立天文台野辺山宇宙電波観測所で、他の銀河の中心にあるブラックホールの周囲の分子ガス円盤を研究していました。水沢VLBI観測所に来てからは、我々の銀河系の中の、銀河系中心を挟んで反対側にある遠い星までの距離測定を中心に研究しています。一児の母で産休・育休を経て研究に復帰しました。趣味は読書(特にSF)

銀河宇宙オデッセイ

1990年にNHK総合テレビの『NHKスペシャル』枠で放送された天文現象を扱った科学番組