第10回目の意中の人は
山内彩さん

距離感覚のちがいが宇宙スケール

マダム

距離を測るという点は共通していますが、いままで遠いところやってた身としてはいかがですか?近っ!みたいに感じませんか?

山内

距離感覚が全然わからなかったです。ふだんですね、天体までの距離が皆さんキロパーセクとかで話をなさるんですけど、私、メガパーセクだったんですよ。近いとか遠いとかの感覚が全然わかりませんでした。

マダム

同じ市内にいるか、県外にいるかっていう、そんな感じでしょうか?

山内

まあ。私がやってた天体っていうのが、だいたい10メガパーセクから60メガパーセクぐらいが多かったんですよね。修士論文を書いたときに60メガパーセクの銀河を「これすごく遠い」って言ったら、光の望遠鏡で遠いの見るのが専門だった人から「そんな近い銀河」って言われました。

マダム

はははは。

山内

赤方偏移で話をなさるような方からすれば、近傍銀河っていう感覚なんですよ。

マダム

まあ、市内やってる人と、国内やってる人と、海外やってる人みたいな?

山内

はい。だからブラックホールの近くをまわっている円盤の半径が1パーセクで「けっこう近い」つもりだったんですが、エックス線の人と話をすると、もっと近いんですよね。

マダム

なるほど。

山内

という感じで、分野が変わると自分の知ってる常識が全部わからなくなってくる。VERAに来て最初はそんな感じでした。

マダム

私が近いと思っているのは、ここでは遠いのね、でもあっちでは近いのね。それはややこしい(笑)。

山内さんにとってVERAとは

マダム

そして現在VERAで研究をされているわけですね。山内さんにとってVERAとはなんでしょうか?

山内

VERAのおかげでお仕事いただいて、VERAのおかげで結婚できて、VERAのおかげで子育てもできまして、そしてまた研究に復帰もできました。本当にVERA様様です。

マダム

VERA「様様」なんですね。

山内

はい。もう、ありがとうございます、という感じですよ。

山内 彩
氏名
山内 彩 やまうち あや
出身地
福岡県生まれ
紹介

大学院生のころは国立天文台野辺山宇宙電波観測所で、他の銀河の中心にあるブラックホールの周囲の分子ガス円盤を研究していました。水沢VLBI観測所に来てからは、我々の銀河系の中の、銀河系中心を挟んで反対側にある遠い星までの距離測定を中心に研究しています。一児の母で産休・育休を経て研究に復帰しました。趣味は読書(特にSF)

パーセク

天文学で使われる長さの単位。
1パーセク
=30,856,800,000,000 km
1キロパーセク
=30,856,800,000,000,000 km
1メガパーセク
=30,856,800,000,000,000,000 km
距離感がさっぱりわからない。

赤方偏移

ここでは宇宙論的な赤方偏移のこと。銀河を出発した光が地球に届くまでに、宇宙膨張によって空間が伸び、光の波長が長い(色が赤い)側にズレて観測される現象。ズレの割合を示す値zが大きいほど、その銀河までの距離は遠い。