第18回目の意中の人は
金美京さん

日本語が堪能

マダム

キムさんは日本語が上手で、レスポンスや間のとり方が自然ですよね。外国語で話すとき、頭の中で思考している言語はなんですか?

キム

日本人と日本語で話す時は、日本語で考えています。日本語と韓国語は文法が似ていて、頭の中で言葉だけ置き換える感じだからラクなんです。英語の場合は、簡単なものは英語で考えますが、難しくなると韓国語で考えてから英語に変換しています。語順が逆なので、その分ちょっと反応が遅いかも。

マダム

どうやって日本語を勉強したの?

キム

日本へ来る前に、ひらがなと簡単な単語だけ覚えてきましたが、ほとんどは日本へ来てから勉強しました。基本的なことは、東京大学の留学生センターの日本語コースで習いました。私が活用したのはテレビのニュースです。発音がキレイで、画面と内容がマッチしているから分かりやすいんです。

マダム

テレビのニュースなら標準語を覚えられますね。

キム

はい。VERAは毎日定時に電話会議があるんですけど、水沢の方が電話越しに岩手弁で話すとわからなくて苦労しました。でも会議で一番大変だったのが川口さんの早口(笑)。話に追いつけなくて、「これさえクリアすれば私、大丈夫!」って思いました。

マダム

川口則幸さんのマシンガントークをクリアしたのはすごい!

日本文学が好き

マダム

読書家で日本の文学作品もお好きだとか。

キム

一番好きな作家は安部公房。太宰治も好きです。太宰治って、ちょっとダメ人間みたいな感じで子供っぽいところが可愛い。「人間が嫌い」っていうフリをしているけれど、じつは人間が好きなんだな、って思います。

マダム

安部公房の好きなところは?

キム

「この人ほんとに頭がいい」って思うところ。安部公房の小説は設定が現実離れしているのに、ある意味ちゃんと現実に基づいていて、小説に出てくる人の反応にはすごく共感できる。「ありえない」っていう状況なのに、「ここは私も同じ反応をするかも」って思う、その設定と共感のギャップがおもしろいです。それを一番感じたのは『方舟さくら丸』という作品です。

マダム

韓国文学では?

キム

好きな作品はたくさんあるんですけど、朴景利(パクキョンニ)の『土地』という小説がすごいと思っています。韓国の『百年の孤独』みたいな何世代も続く話。時代背景に関係なく登場人物に共感できたり、好き嫌いを感じたり、様々な人生が描かれている壮大な話です。

金 美京
氏名
金 美京 キム ミキョン
出身地
韓国生まれ
紹介

ソウル出身。ソウル大学を卒業後、2005年に日本へ。東京大学大学院理学系研究科で修士、博士(理学)取得。現在は水沢VLBI観測所の特任研究員としてVERAの運用に携わりながら大質量星形成領域の電波観測・研究を行っています。 お酒はビールと辛口の日本酒が好き。休日には最近はじめたサーフィンを楽しんでいます。

川口則幸さん
VERAに夢中!第2回を参照
『方舟(はこぶね)さくら丸』

安部公房の小説。1984年に新潮社より刊行された

『百年の孤独』

ガブリエル・ガルシア・マルケス著。1967年にアルゼンチンで発行されたラテンアメリカ文学の代表的な小説

『土地』

朴景利(パクキョンニ)による韓国の大河小説。全20巻。近代史を背景に、様々な境遇に生きる人々を丹念に描き、生きることの意味を深く問いかける本作は韓国でロングセラーとなっている