田村さんは何がきっかけで測地学の道に進まれたんですか?
地面の潮汐現象に興味を持ったのがきっかけです。私は81年の10月に水沢VLBI観測所の前身である緯度観測所に入ったんです。当時は潮汐を予測するための理論値計算の研究をしていて、潮汐の解析プログラムを作りました。
プログラムの話が出ましたが当時、田村さんは円周率の計算で世界一を達成しギネスブックに載った、という情報を得ております。
かれこれ30年も前の話だから恥ずかしいなあ。
ギネスに載るなんてすごいですよ! しかも、おもしろ記録とかではない、まじめな研究で! ぜひその時の話を聞かせてほしいんですけど。
ちょうど緯度観測所の計算機が新しくなったんです。その最新の計算機の動作試験を兼ねて7時間かけて計算をして、円周率208万桁を達成しました。当時の世界記録が100万桁だったので、2倍の記録ですね。
素晴らしいです。
最初は科学雑誌に載ったんです。一緒にやってた東大の金田さんと「ギネスブックに申請するにはどうするんだろうね」なんて話していたら、ギネスブックの編集部のほうから連絡がきました。ギネスブック側もちゃんとリサーチをしているんですね。それで資料やら写真やら送ってください、と言われて提出しました。
サラッとおっしゃってますが、計算機を使いこなせたからこそ達成できたのでは。
非常に大きな桁数のかけ算を速く計算するために、計算方法を変えました。工夫したという面はあるんだけど。計算方法を変えて達成できたというのが、まずひとつ。で、そういう計算方法に対応できる新しい計算機を使えたというのも、またひとつ。あと計算に興味があったというのが大きいですけどね。
そういう興味や工夫はふだんの研究にも生かされているんですね。
円周率の計算自体は、ふだんの研究に直接関係はありませんが、そういう興味とか遊び心のようなものは大事だと思います。そのときの計算機担当の部長が、そういう計算はおもしろいからどんどんやれというような人でね、いろいろなチャンスに恵まれたおかげで世界一を達成できました。
国立天文台水沢VLBI観測所でVERAの測地を担当しています。
江刺地球潮汐観測施設やGPS、重力計などの観測装置を用いた地殻変動を研究しているほか、世界の座標系の中でアンテナの位置を決めるVLBI観測の国際プロジェクトにも協力しています。
古地図の魅力にはまっていて、古い地図を集めるのが趣味です。