VERA

たとえばこの絵なんですけど、これが描かれたのは1854年、江戸時代の末ですよ。外国船が津波に流されて座礁している絵なんだけれど、このアサヒグラフの写真と比べてみて下さい。

150年前にこの絵を描いた人は、津波とはこういうものだよ、ということを将来に残そうと思って描いたはずですよ。写真とまったく同じなんだもの。

でも記憶を残すのは難しい。こうして絵は残ってるんだけれど、忘れちゃってる。

でもいま見たら、こんなに波が高くて、防潮堤を超えて津波が迫って、この写真とまったく同じだよね。10年や100年だったら伝わると思う。いま小学生くらいの子供がおじいさんおばあさんになって、ちゃんと子供に伝えていけば。けれど、この記憶を1000年残せるか。

だから1000年残さないといけない。そうだ、岩手県警が災害ヘリコプターからずーっと撮ってた陸前高田の動画が公開されているんです。

ここ知ってる、これ中学校かな、ここのあたりに橋があったはずなのに、あれ市役所でしょ、これがスーパーマイカルで… そうやって見えるんですよ。それが、津波がひいたら街が全部なくなっちゃった。津波が引いていくところまでヘリコプターから30分以上ずっと撮ってて、よくこれを記録に残してくれたと思う。津波の本性を知らせる、すごい映像ですよ。

映像や資料の記録はたくさんあるけれど、記憶を残すのは難しい。

測地データだってね、自分がこういう研究をしているからというだけでなくて、あの150年前に津波の絵を描いた人の気持ちみたいに、1000年残す事を使命だと思っている。そういう気持ちでいます。