VERAトップページへ  
ここから本文

成果報告その他の報告

研究ハイライト

成果報告

電波銀河3C84のモニター観測から、電波増光を伴わないγ線フレアの存在を確認

画像 VERAVLBA、メッツァホビの共同観測によって、電波銀河3C84の電波での変動の様子が明らかになりました。

3C84は約2.3億光年距離にある天体です。大質量ブラックホールから噴出する相対論的ジェットが放つ強烈な放射によって、電波からガンマ線にわたって光り輝いています。
2008年に打ち上げられたFermiガンマ線天文衛星が最初に3C84からのガンマ線を発見しました。1990年代にはガンマ線は検出されず、現在と比べて7分の1以下の暗さだったことが知られています。つまり、ガンマ線は近年になって明るくなったと考えられています。一方で、VERAの観測によって2005年頃から3C84の中心核付近で電波増光が発見されていて(「活動銀河核3C84の電波増光をキャッチ」)、電波増光とガンマ線増光に何らかの関係があるのではないかと注目されていました。

国立天文台の永井洋氏を中心とする、日本、イタリア、フィンランド、台湾から成る国際研究チームは、VERAと米国のVLBAを使って、2009年からの約2年間にわたり観測を行いました。電波増光が起こっている中心1pc以内の領域に的を絞って、構造の変化(図1:VERA 43GHzで観測)や明るさの変動(図2)を調べたのです。この間、2回のガンマ線フレアが報告されたのですが、電波ではガンマ線フレアに呼応した変動が見られないことがわかりました。

電波とガンマ線の変動に相関が見られなかった理由として、ガンマ線フレアが起こっている領域が電波では見えていない可能性があげられます。相対論的ジェットは根元に近くなるほど、電子密度や磁場強度が高くなり、電波が抜け出てこられなくなります。今回の観測では波長2cmと7mmの電波を使って観測しましたが、これらの電波が抜け出て来られない領域にガンマ線放射領域が潜んでいると予想されます。

今回の結果は、ガンマ線放射領域にヒントを与える結果であると研究チームは考えています。チームは、ガンマ線放射源の謎の解明をめざして、今後も引き続きVERA電波望遠鏡による精力的な観測を計画しています。

fig.1
図1:VERA 43GHz観測で得られた3C84の電波画像。(a)と(b)の間、(c)と(d)の間にガンマ線フレアが起こったが、電波構造には大きな変化が見られなかった。

fig.1
図2:3C84の電波強度変動。シアンで描かれた点が、メッツァホビの7mm電波の強度変動で、黒がVLBAの2cm電波の強度変動。期間を通じて電波は明るくなっている。一方で、ガンマ線フレア(ピンクの縦線の時期)が起こった前後で、電波に大きな変動は見当たらない。"↑"の印はVERA 43GHzの観測が行われた時期を示す。


関連論文



ここからフッター