研究ハイライト
成果報告
大質量星形成領域 NGC6334I の距離を精密に測定
NGC6334 in Submillimeter Wavelengths (出典)
国立天文台ALMA東アジア地域センターの James O. Chibueze氏を中心とした研究グループは、VERAを含む JVN (Japan VLBI Network) を用いて、大質量星形成領域 NGC6334I(North) の水メーザー観測を行いました。
その年周視差を計測したところ、地球からの距離がこれまで考えられていたより 25%ほども近いことなどがわかりました。
NGC6334I は、南天に位置する大質量星形成領域です。
北半球、南半球の両方から見え、太陽からの距離が比較的近いので、今まで多くの観測が行われてきました。
研究グループは 2010年2月〜2012年4月にかけ、VERA、野辺山45m鏡、鹿島34m鏡、岐阜11m鏡を用いて 10回にわたる観測を行いました。
その結果、年周視差は 0.789 ± 0.161 mas、地球からの距離は約 1.27 kpc(=4110光年)と算出されました。これは従来の値(1.74 kpc)より 25%ほど地球に近いことを示しています。質量や光度もこれまでの半分程度の値になりました。
また、23 の水メーザースポットを観測し、平均速度が秒速 12 kmの双極流が検出されました。この双極流の大きさは 720 AU(=0.01光年)、年齢は 295年程度と推定されました。(図2)
さらに、今回の観測結果によって、銀河面上における NGC6334I の位置が改訂され、他の天体の観測結果と合わせて "いて座腕" の位置角も求まりました。(図3)
図1:観測した水メーザースポットの位置変化。十字が測定値、曲線はメーザー運動モデル。
図2:検出された水メーザークラスターの分布。
(左図)拡大部分はSAM1と呼ばれる領域で、多数の水メーザー源が見つかった。
(右図)計測された固有運動(矢印)の方向により、双極流があることがわかる。
図3:銀河面上の NGC6334I の位置。
赤い丸と矢印が、今回の結果による新たな位置と運動方向。その真下にある青い丸は従来の位置。
※座標 (0,0) にある中黒の二重丸は太陽系を示す。
関連論文
- J. O. Chibueze, 2014, AJ, 784, 114, ASTROMETRY AND SPATIO-KINEMATICS OF H2O MASERS IN THE MASSIVE STAR-FORMING REGION NGC 6334I(NORTH) WITH VERA