第3回 木星のガリレオ衛星

木星のガリレオ衛星

図1 左からイオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト(NASA 画像番号 PIA01400 クレジット:NASA/JPL/DLR)

木星のまわりには70個以上の衛星(月)が回っていますが、双眼鏡や小望遠鏡でも見える4つの大きな衛星(月)があります。ガリレオが発見したので、ガリレオ衛星とも呼ばれています。
内側からイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストと名付けられています。イオは地球の月より少し大きく、ガニメデは太陽系内で最も大きい衛星です。

木星の第一衛星であるイオは火山を持つ衛星として知られています。イオも地球の月と同様に自転と公転の時間が同じであるため、同じ面を木星方向に向けています。
イオに働く潮汐力は主に木星とその外側にあるガリレオ衛星によるものです。イオの木星のまわりの公転軌道は地球の月の軌道に比べると円に近く、木星に一番近い時と遠い時の距離の差は平均公転半径の1%以下なのですが、木星の重力がとても強いために潮汐力の変化も大きく、イオの表面は上下に数10m変動すると言われています。変形によって熱が発生して(潮汐加熱)内部が融解し、火山を形成していると考えられています。

イオの外側にあるエウロパ、ガニメデ、カリストは表面が氷で覆われている氷衛星ですが、内部には氷が融けた液体があると考えられています。 2022年に打ち上げられ、2030年代から観測が開始される予定の欧州宇宙機構(ESA)の探査機「JUICE(ジュース)」では、レーザ高度計GALAを使って潮汐変形を測定することにより、ガニメデに液体の海があるかどうかを調べます。
「第2回 月の潮汐変形と内部構造推定」でも書きましたが、内部に柔らかい部分があるかないかで潮汐による表面の上下動の大きさが変化します。モデル計算によれば、完全に氷の場合は1m以下、水の層があれば数mの潮汐変形が発生すると予想されています。ガニメデの場合、潮汐加熱だけで内部を加熱して氷を融かすのは困難と考えられている一方、太陽系の衛星で唯一固有磁場を持つことから、塩水や液体金属など何等かの伝導性流体が内部に存在すると考えられています。

エウロパは他のガリレオ衛星と比べて一回り小さいですが、表面はガニメデ、カリストよりも明るく、衝突クレータが少ないこと、カオス地形と呼ばれる崩壊地形が存在する事などから、表層が活発に更新されていると考えられています。また、ハッブル宇宙望遠鏡の遠隔観測により水蒸気の噴出物(プリューム)が発見されています。
これらの事実から、エウロパ内部の一部が融けていることが示唆され、その原因として潮汐変形による加熱や、融けた部分と固体部分との摩擦による加熱が考えられています。ただし、今の所、表層の活動やプリュームの出現自体が潮汐と直接関係しているかどうかは明らかではありません。
米国航空宇宙局(NASA)が2020年代に打ち上げを予定している探査機「エウロパ・クリッパー」では、搭載される地下レーダー等を使って地下構造を調べつつ、放射温度計やカメラ、また質量分析器やダスト計測器等のその場観測データを駆使して地下海について調査する予定です。 2030年代のJUICEとエウロパ・クリッパーによる調査で氷衛星の不思議が解き明かされることが期待されます。