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経費節減! ブラックボックスに挑む

連載回数: 
21
対談者: 
Hirano, K.

宇宙の仕事に憧れ続けた平野さん。アンテナを動かす仕組みをソフトウエア開発秘話とともに語ります。

オマケ

合唱歴20年!全国コンクールで金賞受賞

平野

高校で合唱部に入り、以来ずっと合唱を続けています。大学のとき、全日本合唱コンクール全国大会で何度か金賞を受賞しました。NHK学校音楽コンクール模範演奏のためテレビ出演経験もあります。

マダム

すごい! 本格的ですね。

平野

職場の合唱団でも活動していますよ。毎週木曜日の昼休みに練習しています。

宇宙は少年時代からの夢

宇宙は少年時代からの夢

マダム

宇宙に興味を持つきっかけはありましたか?

平野

小学校高学年のとき、雑誌「ニュートン」でボイジャーが撮影した天体写真を見たのがきっかけです。土星とか天王星とか、自分は絶対に行かれない場所にモノを飛ばして、こんなに綺麗な写真が撮れてしまう。すごく感動しました。将来は宇宙に関する研究をしたいと思うようになり、宇宙を学べる大学の付属高校ばかりを受験しました。

マダム

そして早稲田大学高等学院から、早稲田大学理工学部物理学科へ進学します。

ブラックボックスの中を手探りで

ブラックボックスの中を手探りで

平野

コンピュータプログラムを表現するプログラミング言語の文字列のことを、ソースコード(source code)と言います。TSUはメーカーが作った装置ですから、「どんなプログラムが書かれているか」というソースコードは企業秘密なのでわかりません。

マダム

まさにブラックボックス! どうやって秘密のソースコードを作り上げるんですか?

平野

ブラックボックスの入出力だけを見てソフトを組んでいきます。手元にあるのは装置の取扱説明書と、どういうデータがやりとりされているかの情報だけ。これまでプログラムを書いた経験はありますが、こんな大規模なプログラムを一から作った経験はなくて……。

アンテナを精密に動かす仕組みとは

アンテナを精密に動かす仕組みとは

平野

TSU(Time Synchronous Unit)とは何かを説明をするために、アンテナを動かすシステムについてお話しましょう。

マダム

お願いします!

平野

20mアンテナは、ソフトウエアが連動して様々な計算機が動き、アンテナのモーターを動かしています。20mアンテナを動かす軸は、(1)方位角(AZ: Azimuth)、(2)仰角(EL: Elevation)、(3)視野回転角(FR: Field Rotation)、(4)2ビーム機構(2B: 2Beam) の4つに分けられます。それぞれ、アンテナのお皿を(1)縦に動かす、同じく(2)横に動かす、(3)受信機を回転、(4)受信機を三次元的に動かす、という仕組みです。

いかに経費を抑え保守するか

いかに経費を抑え保守するか

マダム

水素メーザー原子時計はVERAの4局(水沢・小笠原・入来・石垣島)それぞれにあるのですか。

平野

はい。各局に同じものがあり常に予備も持っています。装置のメンテナンスはメーカーが行いますが、一台につき数か月の期間と高額な費用がかかるため、4局分を毎年メンテナンスに出すことは困難です。そこで、状況を見極めつつ、いつどのタイミングでメンテナンスするか計画を立て、管理することが私の仕事です。

マダム

経費を抑え、観測スケジュールへの影響を考え、なおかつ壊さないように。平野さんのサジ加減が非常に重要な仕事ですね。

原子時計があるんです

原子時計があるんです

マダム

コロナ対応によりアクリル板を挟んでのインタビューとなりますがご容赦ください。はじめに平野さんの肩書きである「技術員」の仕事について教えてください。

平野

技術員は、国立天文台技術職員の職名のひとつで、天文学研究を支えるエンジニアです。プロジェクトによって担当する職務は様々ですが、私はアンテナの機能を支える重要な装置の保守をしています。VERAの受信機・水素メーザー・気象装置などの保守、改良、装置開発が主な仕事です。

マダム

安定運用のための大事な仕事ですね。それぞれの装置と保守の内容をくわしく教えてください。

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