第11回目の意中の人は
石川利昭さん

宇宙への憧れ

マダム

石川さんはもともと宇宙や天文に興味をお持ちだったんですか?

石川

憧れますよね、宇宙とか月って。とくに私の少年時代はガガーリンの初飛行やアポロの月着陸があって、私もごく一般的に憧れる気持ちは持っていました。これは天文台の関口直甫さんが書かれた「宇宙を開発した人々」という本なんですけれども、ガガーリンとかゴッダードとか宇宙開発に関わった人の話です。小学校5年生の時に本屋さんで目にとまって、欲しいなと思って自分で買ったんです。

マダム

石川さんにとって思い出の一冊なんでしょうか。

石川

そうですね。じつは高校を出るとき他の就職先や大学も受かっていたんですが、私は農家の長男なので、地元の緯度観測所で計算機要員を募集していると聞いてこちらに就職したんです。でも長く働いているとご縁があってRISEの仕事で「かぐや」に関わることができたので、少年時代の月への憧れは少し成就できたかなあと思っています。

マダム

わあ、嬉しいエピソードですね。

憧れの大先生と文通バトル?

石川

この本にはもうひとつエピソードがありまして…著者の関口直甫さんは位置天文の専門家で当時、天文台の大先生なんですよ。その関口さんと、手紙で何度も議論を交わすという出来事があったんです。

マダム

なんと!

石川

入所したとき、私は上司である若生さんの計算係をしていました。いまはパソコンで手軽にプログラムを走らせることができますが、当時は「こういう計算をしてください」というものを渡されて、FORTRANでプログラミングし、それをカードパンチして計算機にかけるんです。

マダム

つまり数学の計算式をプログラム言語にして、計算して、「こんな結果が出ました」って持っていくと。

石川

そうそう(笑)。その計算結果の解釈に対して、若生さんと関口さんは一致し合えない部分もありました。関口さんに対して若生さんがコメントを出す。すると反対のコメントを関口さんが出す。

マダム

バトルが…あっ、議論ですね(笑)。

石川

そう、議論(笑)。関口さんから私にも「これはこうだから、あなたもちゃんと計算してくださいね」っていうコメントをいただいたりして。おもしろいご縁ですよね。

石川 利昭
氏名
石川 利昭 いしかわ としあき
出身地
岩手県生まれ
紹介

1973年に文部省緯度観測所に研究補助員として入所し、以来40年以上にわたって水沢観測所の計算機システム、ネットワークシステム等の運用・管理を担当しています。最近では天文学専用として世界最速のスーパーコンピュータ「アテルイ」の導入に関わり、高速ネットワーク回線の利用にも携わっています。趣味は音楽。特に洋楽が好きですが、時々謡曲も謡います。

FORTRAN

1956年にIBM社のJ.Backusによって開発された数値計算用のプログラム言語。主に科学技術計算に用いる。