第12回目の意中の人は
秦和弘さん

VLBIのぶっとんだ魅力

マダム

ブラックホールを研究しようと志したきっかけやエピソードがあれば教えて欲しいのですが。

大学生のとき、日本に電波天文学の分野で、ある特定のマニアックなポイントを極限まで追求する「ぶっとんだ観測装置」があると知ったんです。それがVLBIなんですけど(笑)。極限の視力を追求しますっていうプロジェクトで、それをやると、すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡の100倍も1000倍も解像度がよくなって、どんな観測装置よりも詳しくブラックホールのことがわかるっていう話を聞いたんです。

マダム

視力をあげることに特化して、ピーキーな性能を得るんですね。

そうです。たとえば、すばる望遠鏡ってホントに万能で王道なんですけれど、それからすると、VLBIって邪道なんです(笑)。極限の視力を得るかわりに、絶望的に感度が悪くてノイズが多いっていう代償がある。だから観測できるのは、宇宙のなかでも、ものすごく活発な現象だけに限られるんです。

マダム

観測できる天体が限られているから、万人受けはしないと。

そう。自分は逆にそういうニッチなところがすごくおもしろいと思ったんですよ。
それで、VERAの兄弟にあたるスペースVLBIっていうプロジェクトに参加して、ブラックホールを研究するようになりました。

秦 和弘
氏名
秦 和弘 はだ かずひろ
出身地
島根県生まれ
紹介

アジアや欧米の人たちと協力しながら地球規模の望遠鏡を形成する取り組みを進めています。ブラックホールと仲良くなって自分にだけコッソリ秘密を教えてもらうために、できるだけ頻繁に会話(=観測)をするように心がけています。またブラックホール本体の写真撮影を目指す国際プロジェクト「Event Horizon Telescope」のメンバーとしても活動しています。

スペースVLBI

ここでは現JAXA/ISASと国立天文台で研究・開発・運用が行われたVSOP計画 (VLBI Space Observatory Programme) を指す。電波天文衛星はるかを打ち上げ、地球上の電波望遠鏡と連携して世界初のスペースVLBI観測を実施した。