第12回目の意中の人は
秦和弘さん

成果を出せなかった暗黒時代

じつは、僕の大学院生の日々は暗黒時代だったんです。まわりの人たちがどんどん論文を出しているなか、僕は5年間、成果がひとつも出なかった。正直つらかったです。まわりが心配して、成果が出やすいテーマをやってみないかって勧めてくれたりもしました。それは安全な道だったかもしれないけれど、でも自分は絶対イヤだった。「これは自分がいたからこそできた成果だ」って思えることがしたかったんです。

マダム

安全策はとらなかったんですね。

はい。成果が出る保証はまったくなかったんですけど、でも、なんとなく自信があったんです。自分がこれだけ考えてやってきたことなんだから、これで終わるはずがないって。5年間なにも成果が出なかったんですけど、最後の最後で幸運も重なり論文を出すことができました。でもこれって、安定志向だったり、できるだけ寄り道をしないで行こうとしていたら、絶対に出なかった成果なんですよね。

マダム

それが、ネイチャーに掲載されたM87の論文だったんですね。

秦さんにとってVERAとは

マダム

そんな経験をした秦さんから、いままさに進路を探している中学生や高校生、若い人たちにエールをお願いします。

最初から無理だと決めつけずに挑戦をして欲しい。たしかに安全路線でいけば傷つかないし、安定した人生が送れるとは思うんですけど、一度きりの人生、山あり谷ありでもおもしろいじゃないですか。自分に正直になって、ゆずれない部分は信念を貫いて、とにかくチャレンジをして欲しいと思います。

マダム

ありがとうございます。そうやって自分の信念を貫いた秦さんにとって、VERAとは?

僕がいたイタリアにも「VERA」という言葉があって「真実」という意味で使われていたんですよ。それと関連してですけれど、自分にとってVERAとは「宇宙の真実を教えてくれるもの」です。

マダム

感動で鳥肌が立ちました!秦さん、どうもありがとうございました。

秦 和弘
氏名
秦 和弘 はだ かずひろ
出身地
島根県生まれ
紹介

アジアや欧米の人たちと協力しながら地球規模の望遠鏡を形成する取り組みを進めています。ブラックホールと仲良くなって自分にだけコッソリ秘密を教えてもらうために、できるだけ頻繁に会話(=観測)をするように心がけています。またブラックホール本体の写真撮影を目指す国際プロジェクト「Event Horizon Telescope」のメンバーとしても活動しています。