第19回目の意中の人は
亀谷收さん

電波天文学者のお仕事

マダム

亀谷さんの現在のお仕事について教えてください。

亀谷

私はVERAプロジェクトの水沢局担当をしています。日々のアンテナの状況を把握してスムーズに観測が行えるようにしています。急にトラブルが発生したりして、いつ何があるかわからない仕事ですが、協力してくれる人がいっぱいいるので助かってますね。先ほど述べた周波数保護の仕事や、広報委員として取材対応などのサポート、地元の高校の観測実習を指導したり、VERA20mアンテナの隣にある10mアンテナの運用も担当しています。

マダム

10mアンテナ!ずっと気になっていたんです。今でも動いているんですね。

亀谷

元気に動いてますよ(笑)。以前はVLBI観測の共同利用に対応していましたが、いまは必要に応じて試験観測を行っています。1992年に完成し、国内のVLBIの発展にものすごく寄与した歴史的なアンテナです。ちょっと見に行ってみましょう。

10mアンテナの見どころ

亀谷

この細い板がたくさんついた看板は、世界のVLBI局の方位と距離を表しています。水沢10mアンテナの中心から各アンテナまでの方向と距離を、1万kmを1mになる縮尺で表しました。下部の長い板は南半球のアンテナを示しています。ブラジルまで1万2千kmあるのを1.2mに縮めて、板の長さで表しています。国内のアンテナは縮尺を10倍にして千kmを1mにしてあります。

亀谷

測地担当の寺家さんがVLBI観測をして、各局のアンテナ中心までの実距離を約1cmの精度で測定した数字を記載しているんですけど、実はもう、この数字は正しくないんです。

マダム

えっ?

亀谷

2011年の東日本大震災で水沢の観測所全体が3mも動いてしまったので、この数字は3mぶんずれているんですよ。見た目上は何の変哲もないですが、私にとっては地震の爪痕を感じる場所なんですよね。

マダム

そうだったんですね。それを知ると見方が変わります。

世界のVLBI局の方位と距離を表す
世界のVLBI局の方位と距離を表す
亀谷 收
氏名
亀谷 收 かめや おさむ
出身地
北海道生まれ
紹介

1956年帯広市出身、東京育ち。埼玉大学卒業後、東北大学大学院理学研究科で修士、大質量星形成領域の電波天文学研究で理学博士(1986年)。野辺山宇宙電波観測所研究員等を経て、1990年に国立天文台水沢に採用され、現在、水沢VLBI観測所助教。趣味は、合唱、フルート演奏(上手ではない)など。零式艦上戦闘機(ゼロ戦)が好き。1993年設立の日本宇宙少年団水沢Z分団の分団長を務めています。

水沢10mアンテナ

国立天文台水沢の見学コースの一番奥にある

VLBI (超長基線電波干渉計=Very Long Baseline Interferometry)

数千キロメートルも離れた複数の電波望遠鏡の観測データを合成して一つの観測データとして扱う手法

測地担当の寺家さん

寺家孝明さん(VERAに夢中第9回)

東日本大震災で地面が3m動いた

水沢の観測所全体が東南東に約3メートル移動していた

田村良明さん(VERAに夢中第5回)-東日本大震災による影響