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研究ハイライト
プレスリリース
VERAによる天体精密距離測定の成功について
‐もっとも遠い天体の距離測定ならびに世界最高精度の観測を達成‐
国立天文台のVERA(ベラ、VLBI Exploration of Radio Astrometry)が、三角測量によってもっとも遠い天体の距離の計測に成功し、また、観測対象として重要なOrion KL天体の世界でもっとも高い精度での距離計測にも成功しました。
VERAは、岩手県奥州市、鹿児島県薩摩川内市、東京都小笠原村、沖縄県石垣市の4ヶ所に配置した、直径20mの電波望遠鏡からなる観測装置です。この望遠鏡群を用いて、銀河系内の天体の距離と運動を精密に計測し、精密な銀河系の3次元立体地図を作ることを目指しています。
VERAは、2002年に建設が完成し、その後様々な試験を経て精度を向上させ、遂に世界最高の精度が得られるようになりました。
VERAと今回の成果の概要
VERA計画は、全国4ヶ所に設置した電波望遠鏡が同時に天体を観測した信号を、国立天文台三鷹にあるVLBI相関局において焦点を結ばせることにより、直径2300km(奥州市と石垣市の距離)に相当する電波望遠鏡の性能を引き出すものです(下図)。これによって天体の位置を精密に計測し、地球が太陽の周りを回転(公転)することによる天体の方向の違いから距離を求め、その変化から天体の運動を3次元的に求めることができます。この方法は、いわば三角測量の原理によって天体の距離を計測する方法であり、もっとも正確で信頼のおけるものです。
本計画では、世界ではじめて2つの方向を同時に観測することのできる2ビーム観測システムを開発し、天体位置の精密計測でもっとも大きな誤差を生み出す地上大気による「天体のふらつき」を補正することができるようになりました。これにより、三角測量によってもっとも遠い天体の距離の計測に成功し(成果1)、また、観測対象として重要なOrion KL天体の距離を世界でもっとも高い精度で計測することに成功(成果2)しました。
本計画は、この方法によって最終的には、銀河系(天の川銀河)の天体のうち約1000個程度について位置と運動を計測し、銀河系の地図をつくることを研究目的としており、今後、10年から15年をかけて観測を積み上げることにより目標を達成したいと考えています。このように銀河系の構造と運動状態を明らかにすることにより、現代天文学において大きな謎である暗黒物質(ダークマター)の分布や正体の解明に迫れるものと期待しています。
また、本計画は、国立天文台だけではなく鹿児島大学理学部との共同研究で進めてきたものです。大学共同利用機関である国立天文台が大学と共同で電波望遠鏡システムの開発および観測にあたることは初めての例であり、全国的に注目を集めています。
図:VERAの観測局配置図(クリックすると拡大表示されます)
VERAによる天体精密距離測定の成功について (このページです)
成果1: S269 ‐ 年周視差の世界新記録の達成
成果2: Orion-KL ‐ 銀河系でもっとも重要な天体について世界最高の距離精度を達成
三角測量と年周視差
年周視差計測の歴史
共同研究者一覧