若手研究者の秋山さん、今年3月には「東京大学総長賞」を受賞されて大活躍ですね。ところでこの「ブラックホールの直接撮像を目標とする国際共同研究を牽引し世界的に高い評価を受け新しい天文学の分野を開拓」というのは、どんな研究なんですか?
ひとことで言うと「人類で初めてブラックホールの写真を撮ります!」という研究です。
なんと大胆な!一体どうやって...
世界各地のサブミリ波望遠鏡を組み合わせて地球サイズの望遠鏡を仮想的に作ることができます。こうすることによって視力に相当する「分解能」が非常に良くなるので、いままで誰も見ることのできなかったブラックホールを直接観測することができるんです。これがイベント・ホライズン・テレスコープ(Event Horizon Telescope、以下EHT)というプロジェクトです。
どうして今まで見ることができなかったんですか?
ブラックホールってすごくちっちゃいんですよ。
ちっちゃいんですか!?
ブラックホールは極めて高密度な天体なので、重さの割にとっても小さいんです。もし地球をブラックホールにしようと思ったら半径1cmの大きさに圧縮しなきゃならない。太陽だってたった3kmの半径に押し込めないとブラックホールにならないわけですから、そんなものが遠くにあったら、ちっちゃいわけです。
なるほど。それを見ようと思うと困難ですね。VERAの分解能を持ってしても無理なんですか。
はい。VERAの分解能は1ミリ秒角。でもブラックホールを見るために必要な分解能は0.03〜0.05ミリ秒角なんです。
しょぼん。本当に桁違いなんですね。
EHTの分解能は現状で約0.02ミリ秒角(=20マイクロ秒角)。
すごい!!ブラックホールが見える分解能が実現できているんですね。
記事公開日:2015年7月15日
国立天文台 水沢VLBI観測所のメンバーも参加して国際的に進められているEHTプロジェクトの一員として、ブラックホールの人類初の写真撮影に向けた準備研究を行っています。
またブラックホールから噴出するジェットとよばれる不思議な現象の研究をはじめとした、ブラックホールの近くで起こる高エネルギー現象の観測的研究をVERAや日韓VLBI観測網などを用いて行っています。
重力が非常に大きく、光さえ脱出できない極めて高密度の天体
波長1mm以下の電波のこと
サブミリ波VLBIによる超高感度・高分解能の観測によって、直接ブラックホールの写真を撮り、ブラックホールの存在を究極的に証明する国際プロジェクト。
1周の360分の1が1度角、1度角の3600分の1が1秒角。1秒角のさらに100万分の1が1マイクロ秒角