M87の1mm帯のVLBI観測で、初めてクロージャー位相を検出

東京大学/国立天文台の秋山和徳氏を中心とする国際EHTチームは、おとめ座の銀河 M87 の中心核にある巨大ブラックホールを観測し、クロージャー位相の検出に初めて成功しました。

クロージャー位相は、干渉計で天体写真を取得する際に非常に重要な観測量で、今回のその初検出は、今後のブラックホール直接撮像に大きなはずみをつけるものです。

今回得られたクロージャー位相は、これまでに予言されている様々なブラックホールの予想図を区別するまでには至りませんでしたが、今回の結果から、今後ALMAの参加したVLBI観測が実現すれば、ブラックホールの真の姿に詳細に迫れることも示されました。

 参考文献:Akiyama et al., ApJ, 807, 150 (2015)

疎性モデリングを用いたブラックホール直接撮像の研究が、NHKサイエンスZERO にて紹介されました。

疎性モデリングを用いたブラックホール直接撮像の研究が、NHKサイエンスZERO にて紹介されました。

 「情報科学の名探偵! 魔法の数式 スパースモデリング」 NHKサイエンスZERO 2015年8月23日放送

本プロジェクトの関係者の秋山和徳さんが、AERA 2015年4月27日号に掲載されました。

平成26年度東京大学総長賞を受賞した秋山和徳さん(東京大学博士課程)に関する記事が、AERA 2015年4月27日号:『東大総長賞の4人はなぜ「突き抜けた」か 昨年度の受賞者の素顔』に掲載されました。

>AERA 2015年4月27日号:『東大総長賞の4人はなぜ「突き抜けた」か 昨年度の受賞者の素顔』(3~4ページ目)

ALMA Phase-up Project (APP)で初フリンジを検出!

ALMA望遠鏡の複数のアンテナを合成して一つのVLBI局とする ALMA Phase-up Project (APP) の試験観測が2015年1月13日に初めて行われ、近接するAPEX望遠鏡との間でフリンジを検出することに成功しました。
この試験によって、APPのためにALMAに設置された水素メーザーやレコーダーなどのVLBIの観測装置が正しく動作していることが確認されました。

このシステムには日本チームが開発した、標高5200mのALMA観測サイトから標高2900mの中間山麓施設へデータを伝送する光伝送装置も含まれており、これを含めてすべての機器が正しく有機的に動作していることが今回確かめられました。

この成功によって、ALMAを含むミリ波・サブミリ波VLBIの実現により一層近づいたといえます。

国際ALMA観測所の報告(英文・リンク切れ)

疎性モデリング技法による超解像撮像の可能性を示した論文が完成

超巨大ブラックホールの撮像では、VLBIで如何に高い分解能(視力)を得るかが最も重要です。
しかし、分解能は波長と基線長の比から決まり、波長は観測技術的で、また基線長は地球の大きさで制限されるので、無限に高くすることはできません。

この困難をデータ解析的に解決する手法として、我々は疎性モデリングの手法を用いて解像度を従来よりも向上させる超解像技法の検討を行いました。
詳しいシミュレーションの結果、このような手法を用いて、従来に比べて数倍程度分解能を向上させることができる可能性が示されます。

このような手法を今後実観測データに適用することで、ブラックホールの直接撮像に大きなインパクトを与えることが期待されます。

論文
Honma, Akiyama, Uemura & Ikeda, PASJ, 2014, in press
"Super-resolution imaging with radio interferometer using sparse modeling"