秋山和徳 (NRAOジャンスキーフェロー) が令和2年度 文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞

このたび、国立天文台水沢VLBI観測所の秋山和徳 (あきやま かずのり) 特別客員研究員が、令和2年度 文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞しました。若手科学者賞は科学技術分野の文部科学大臣表彰の一つで、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の科学技術分野の若手研究者に授与されます。今年度は秋山氏を含め97名が受賞しました。

秋山氏は現在、米国マサチューセッツ工科大学ヘイスタック観測所において、アメリカ国立電波天文台 (NRAO) ジャンスキーフェローとして勤務しています。イベント・ホライズン・テレスコープによってM87巨大ブラックホールのシャドウが初めて撮影されるまでの、秋山氏の研究や貢献が高く評価され、若手科学者賞の受賞となりました。秋山氏は今年2月に2019年度日本天文学会研究奨励賞を受賞しています。

「先日の日本天文学会研究奨励賞に続いて、このような栄誉を賜り大変光栄です。今回の受賞はブラックホールの初撮影が天文学のみならず、日本の科学技術分野全体に大きなインパクトを与えられた結果だと考えています。」と今回の受賞について秋山氏は話しています。

クエーサー 3C 279 の中心で輝くジェットをEHTが高解像度で観測

クエーサー 3C 279 の巨大ブラックホールから吹き出すジェットをEHTで観測した成果が発表されました。観測が行われたのは、1年前に発表した M87 の巨大ブラックホールと同じ、2017年4月です。ドイツ・マックスプランク電波天文学研究所のキム・ジェヨン氏らがデータ解析を行い、このジェット根元を0.4光年ものサイズで分解した、これまでで最も高精細な画像が得られました。

EHTの高い解像度により、今回新たに、ジェットが少しねじれた形状をしていること、ジェットに垂直な構造があることがわかりました。これはジェットが吹き出す降着円盤の極の部分を見ている可能性があると考えています。また、4日間の観測の間にその形状が細かく変化していることから、円盤の回転とガスの降着、ジェットの放出の様子を知る手がかりになると考えられます。

詳細は以下をご覧ください。

ウェブリリース (日本語)
http://www.miz.nao.ac.jp/eht-j/c/pr/pr20200407

クエーサー 3C 279 の中心で輝くジェットを EHT が高解像度で観測

世界の8つの電波望遠鏡をつなぎ合わせて地球サイズの仮想電波望遠鏡を作り上げる「イベント・ホライズン・テレスコープ(Event Horizon Telescope: EHT)」プロジェクトが世界初のブラックホール画像を発表してから、間もなく1年になろうとしています。EHTは、超巨大ブラックホールそのものだけでなく、超巨大ブラックホールから噴き出すと考えられている超高速ジェットも史上最高の解像度で観測していました。観測対象となったのは、3C 279と呼ばれる銀河の中心部が放つジェットです。3C 279のジェットの根元からは幅広い波長帯にわたって電磁波が発せられていて、さらにその強度は大きな時間変動を見せます。ドイツ・マックスプランク電波天文学研究所のキム・ジェヨン氏らのデータ解析によって、この3C 279のジェットの根元の、最も高精細な画像が得られました。

COVID-19 発生に伴い、EHTの2020年観測キャンペーンは中止となりました

イベント・ホライズン・テレスコープ (EHT) は、昨年出版した最初の成果 (史上初、ブラックホールの撮影に成功!) からさらに研究を発展させるために、2020年3月末に世界中の電波望遠鏡を組み合わせた観測を実施する予定でした。しかしながら残念なことに、いくつかの観測局が COVID-19 の拡大に伴い閉鎖されたことから、EHTの観測キャンペーンも中止することになりました。気象条件と天体位置の関係から、好条件でEHTの観測を行うことができるのは3月末から4月初めのみであるため、私たちが再度観測に挑戦できるのは、2021年3月となります。

秋山和徳 (NRAOジャンスキーフェロー) が2019年度日本天文学会研究奨励賞を受賞

このたび、国立天文台水沢VLBI観測所の秋山和徳 (あきやま かずのり) 特別客員研究員が、2019年度日本天文学会研究奨励賞を受賞しました。秋山氏は現在、米国マサチューセッツ工科大学ヘイスタック観測所において、アメリカ国立電波天文台 (NRAO) ジャンスキーフェローとして勤務しています。イベント・ホライズン・テレスコープ (EHT) による M87の超巨⼤ブラックホールシャドウの初撮影の実現に至るまでのこれまでの秋山氏の研究や貢献が高く評価され、研究奨励賞の受賞となりました。

日本天文学会研究奨励賞は1988年に日本天文学会員の寄付により創設され、35歳以下で過去5年間に優れた研究成果を挙げている35歳以下の若手天文学研究者に毎年最大3名まで授与されます。今年度は秋山氏を含め3名が受賞し、賞状とメダル、そして賞金が授与されます。

「このような栄誉を頂き、大変嬉しいです。今回の受賞は、ブラックホールの初撮影という天文学の大目標の実現に向け、EHTの素晴らしい同僚たちと国際チームで一丸となって努力した結果が実ったものだと考えています」と、今回の受賞について秋山氏は話しています。

巨大ブラックホールから噴出するジェットの観測研究をまとめた論文が出版されました!

本プロジェクトのメンバーで水沢VLBI観測所の秦和弘が活動銀河ジェットに関する近年の観測研究をまとめたレビュー論文を出版しました。活動銀河ジェットとは、銀河の中心の巨大ブラックホールによって駆動される高エネルギーの噴出ガスのことで、例えばEHTでブラックホールシャドウが撮影されたM87は最も代表的な活動銀河ジェット天体の1つです。その形成メカニズムは天文学史上最大の謎の1つとして長年に渡り活発に研究が行われています。

本レビュー論文では、EHTによるM87ブラックホールシャドウ観測成果に加え、M87をはじめとする様々な巨大ブラックホールジェット天体について、特にVLBIに基づくジェットの根元の観測研究について近年の様々な研究成果をレビューし、これまでにわかったこと、まだわからないこと、そして次に取り組むべき課題などをまとめました。ブラックホールジェットの研究はEHTやEAVNの拡張によって今後一層の進展が期待されます。

 

EHTコラボレーションミーティング 2019 が開催されました

2019年12月2日から12月6日に、米国ハワイ州ヒロにて EHTコラボレーションミーティング2019が開催されました。この会議には、世界16の国と地域から114名が参加しました。会議ではプロジェクト全体についての短期から長期にわたる活動指針が話し合われた他、各作業グループの活動報告や今後の予定、議論すべき問題の提起などが行われました。

日本からは、本間、秦、田崎、川島 (国立天文台)、池田 (統計数理研究所) が参加し、海外からも秋山、森山 (MIT)、井上、松下、浅田、中村、小山 (ASIAA)、水野陽介 (フランクフルト大)、水野いづみ (EAO) が参加し、各自の担当部分について講演・議論を行いました。

文責:田崎文得

コラボレーションミーティングの様子。クレジット:EHT Collaboration、撮影:田崎文得