「視力50万の瞳」が捉えたソンブレロ銀河の中心に潜む超巨大ブラックホールの周辺構造

ソンブレロ銀河(別名 M104, NGC4594):「草食系」巨大ブラックホールの代表格

図2:ハッブル宇宙望遠鏡によるソンブレロ銀河の可視光画像(NASA)


我々は今回地球から約2900万光年離れたところにある「ソンブレロ銀河」に着目しました(図2)。ソンブレロ銀河はおとめ座方向に位置する地球から最も近い銀河の1つで、宇宙で最も美しいとの呼び声高い大変有名な渦巻銀河です(ソンブレロ、という名はその形状がソンブレロ帽に似ていることに由来します)。この銀河の中心部には太陽質量の約10億倍という宇宙最大クラスの草食系巨大ブラックホールが存在することが知られており、将来のブラックホール直接撮影の最有力候補の1つとしても注目されています。

しかしながら活動性の弱い草食系の代表格ゆえ中心部の観測は難しく、ブラックホール周辺の詳しい構造は未だ明らかになっていませんでした。ハッブル宇宙望遠鏡の解像度をもってしても中心部にはジェット等の目立った構造はこれまで確認されていません。一般にジェットは可視光より電波で明るいという性質があるためハッブルと同程度の解像度を持つ電波望遠鏡でも観測されていますが、中心部はやはり微弱な点源状にしか映りません。

ソンブレロ銀河の中心で身を潜める草食系ブラックホールの姿を暴くにはどうしたらよいか?天文学者につきつけられた課題は、これまで以上に「ブラックホールに肉薄する高い解像度(視力)で観測」し、かつ「微弱な信号を鮮明に検出する」、この2点を同時に克服することでした。

--> 3. 観測手法:位相補償VLBIとは?

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