「視力50万の瞳」が捉えたソンブレロ銀河の中心に潜む超巨大ブラックホールの周辺構造

観測結果

図5:(上段)ハッブル宇宙望遠鏡によるソンブレロ銀河. (下段)研究チームが今回初めて検出・撮影に成功した中心核の超高解像度VLBI電波写真


研究チームは今回全米10台の電波望遠鏡から構成される世界最大級のVLBI専用観測網Very Long Baseline Arrayを利用してソンブレロ銀河の中心部を位相補償VLBI観測しました。その結果、ソンブレロの巨大ブラックホール周辺の微弱構造を約140マイクロ秒角(1度角の約2600万分の1)の解像度で検出・撮影することに世界で初めて成功しました(図5)。これはハッブル宇宙望遠鏡の約400倍の解像度であり、シュバルツシルト半径(ブラックホールによる重力が強く光させ脱出できなくなる半径)の僅か数十倍程度の領域にまで迫る空前の解像度です。これほどまでブラックホール本体に肉薄する撮影が成功したのは天の川銀河を除く草食系ブラックホールでは初めてのことです。

さらに今回の高解像度撮影の結果、全長わずか1光年程度と非常に小規模ながらブラックホール近傍から南北2方向に向かってガスが対称的に噴出する様子を捉えることにも初めて成功しました(図6)。南北のガスの明るさの比率などを詳しく調べたところ、光速の約20%程度以下の速度で北側のガスが我々に向かって近づいている、逆に南側のジェットが我々から遠ざかる方向に噴出していることが明らかになりました。これはハッブルなどの解像度では決して明らかすることができなかった新事実です。

図6:今回明らかになったソンブレロ銀河の巨大ブラックホール周辺構造(右は想像図)。

今回の発見は巨大ブラックホールの生態解明にとって非常に重要な結果です。ソンブレロ銀河のような草食系ブラックホールにも規模は小さいながら、肉食系と同じような噴出流が存在していたのです。草食系は宇宙の大多数を占めるわけですから、本結果は「ガス噴射」は多くの巨大ブラックホールが抱える共通の能力であることを示唆しています。

--> 5. 本研究のインパクトと今後の展望

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