小型・低価格な衛星レーザ測距システム Omni-SLR

【この記事は一橋大学大坪俊通氏に寄稿いただきました】

衛星レーザ測距とは

現代では,位置に関する情報はみなさんの生活に欠かせないものになっています.多くのみなさんは,スマートフォンやカーナビゲーションなどで数メートルの精度で位置がわかることは実感してることと思います.さらに,地球環境や災害を監視したり,最先端の科学成果を生み出したりするためには,地球規模で数ミリメートルの精度での位置を知ることが必要になっています.たとえば,海面高が年間数ミリメートルの割合で上がっていることがわかってきましたが,そのためには地球の固体部分の形や大きさも同程度の精度で知っておく必要があります.

Dragonfly地震計の開発

(この記事は、水沢の共同利用施設を利用された白石浩章様にご寄稿いただきました。)

はじめに

Dragonfly(日本語では「トンボ」の意味)は米国NASAのニューフロンティアプログラムの4番目として採択された土星の衛星タイタンを離着陸探査するミッションです。

探査機は2027年に打上げが予定されていて、2030年代半ばにタイタンに到着後、約3年間の観測を行います。ミッションの詳細については以下のURLが参考になります。(https://dragonfly.jhuapl.edu/index.php)

Dragonflyは8つのプロペラを持つ離着陸が可能なドローン型探査機で、16日もしくは32日ごとに動力飛行と着地観測を繰り返しながら、大気中だけでなく表層物質の化学分析や気象観測、さらに地中探査を多地点で行います。それによって生命前駆物質が存在するのか否かを調べたり、現在の姿から太古の地球環境によく似ているとされるタイタンの進化過程を明らかにしたりすることを目的としたとても野心的なミッションです。

西山学氏、受賞のご報告

 

この度、東京大学理学系研究科研究奨励賞とAmerican Geophysical Unionの Outstanding Student Presentation Awardという大変光栄な賞をいただくことになりました。修士課程での研究をこのように評価していただき大変嬉しく思います。これからは博士課程での研究が始まります。修士課程以上に没頭し、次の3年間も一生懸命頑張りたいと思います。最後に、これまで指導して下さった竝木則行教授をはじめ先生方、研究室の皆さん、そして「はやぶさ2」プロジェクトに感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。

 

西山氏の論文は★こちら★

 

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ふれあい天文学・ 揖斐川町立春日小学校

2021年1月15日に、「ふれあい天文学」の授業をしました。今回のお相手は春日小学校の1年生から6年生までの生徒さん11人です。本当は岐阜県まで行きたかったのですが、Zoomを用いた遠隔授業となりました。
最初に、Mitakaや動画を用いて太陽系の惑星の大きさ、軌道、自転の説明をしました。続いて小惑星について簡単に説明し、2020年12月にリュウグウのサンプルを地球に届けた「はやぶさ2」の打ち上げから帰還までの主なイベントについて、特にリュウグウ近傍フェーズの出来事は当時を思い出しながら話しました。
小学校としては長めの85分を授業に割り当てていただきましたが、当時の記憶が蘇るにつれて力が入り、途中で先生に促されるまで休憩を入れるのを忘れるほどでした。授業の終わりに設けた質問タイムでは、惑星や探査機について、とても鋭い質問がたくさん出ました。長丁場にもかかわらず、集中力を切らさずに話を聞いてくださった証です。
生徒の皆さん、授業の準備をしてくださった先生方、ありがとうございました。

(文責:松本晃治)

よみもの「小惑星で地震は起きる?〜はやぶさ2の観測から分かったこと〜」を掲載しました

 

「はやぶさ2の人工クレーター形成実験での地震動で表面の岩は大きく動くのではなかろうか…」

2019年3月、当時パリ地球物理研究所に短期留学中であった筆者は「はやぶさ2」の衝突装置(SCI: Small Carry-on Impactor)において生じる地震動を数値シミュレーションで予想していました。これまでイトカワをはじめ小惑星上では表面物質が移動したとみられる様々な証拠が見つかっており、その原因として隕石が衝突して生じる地震動が有力な候補として考えられています。これまでの研究ではたった10グラムの隕石が衝突しても地震動が小惑星表面全体に影響をもたらすとされており、2キログラムもあるSCIを衝突させたらリュウグウでも大きな地震動が引き起こされるのではないかと考えられてきました。実はSCIで生じる単位体積あたりの地震エネルギーの予想値を地球体積に換算すると、2011年の東日本大震災を引き起こした「東北地方太平洋沖地震」に匹敵します。そのため実際に数値シミュレーションをしてみると、SCI実験でクレーター周囲の岩塊を数メートル以上動かす地震動が生じるという結果が出てきました。

ふれあい天文学・コートダジュール日本語補習授業校

 

2020年12月5日(土)に「ふれあい天文学」のリモート授業を行いました(2020年度の「ふれあい天文学」の事情に関しては過去記事参照)。担当したのは南仏・ニース近郊にあるコートダジュール日本語補習授業校さんです。近郊には「はやぶさ2」にも参加している研究者のいるコートダジュール天文台や、同天文台の施設である月レーザ測距用望遠鏡(グラース)などがあり、世界的観光地ながらアカデミックな雰囲気の地域です。過去には欧州地球物理連合(EGS、現在のEGU)の会合が行われた場所でもあります。