よみもの「小惑星で地震は起きる?〜はやぶさ2の観測から分かったこと〜」を掲載しました

 

「はやぶさ2の人工クレーター形成実験での地震動で表面の岩は大きく動くのではなかろうか…」

2019年3月、当時パリ地球物理研究所に短期留学中であった筆者は「はやぶさ2」の衝突装置(SCI: Small Carry-on Impactor)において生じる地震動を数値シミュレーションで予想していました。これまでイトカワをはじめ小惑星上では表面物質が移動したとみられる様々な証拠が見つかっており、その原因として隕石が衝突して生じる地震動が有力な候補として考えられています。これまでの研究ではたった10グラムの隕石が衝突しても地震動が小惑星表面全体に影響をもたらすとされており、2キログラムもあるSCIを衝突させたらリュウグウでも大きな地震動が引き起こされるのではないかと考えられてきました。実はSCIで生じる単位体積あたりの地震エネルギーの予想値を地球体積に換算すると、2011年の東日本大震災を引き起こした「東北地方太平洋沖地震」に匹敵します。そのため実際に数値シミュレーションをしてみると、SCI実験でクレーター周囲の岩塊を数メートル以上動かす地震動が生じるという結果が出てきました。

ふれあい天文学・コートダジュール日本語補習授業校

 

2020年12月5日(土)に「ふれあい天文学」のリモート授業を行いました(2020年度の「ふれあい天文学」の事情に関しては過去記事参照)。担当したのは南仏・ニース近郊にあるコートダジュール日本語補習授業校さんです。近郊には「はやぶさ2」にも参加している研究者のいるコートダジュール天文台や、同天文台の施設である月レーザ測距用望遠鏡(グラース)などがあり、世界的観光地ながらアカデミックな雰囲気の地域です。過去には欧州地球物理連合(EGS、現在のEGU)の会合が行われた場所でもあります。

ふれあい天文学・大連日本人学校

 

国立天文台の職員が小中学校を訪ねて宇宙の話をする「ふれあい天文学」は、今年はCOVID-19の都合で主にオンライン・コミュニケーションツールを利用したリモート授業として実施されています。場所を選ばないリモート授業の利点を生かして、今年は国外の日本人学校さんからの申し込みが多数あり、今回私は2020年11月19日(木)に、中国・大連の日本人学校で学ぶ中学生に向けて授業を行いました(写真1)。小惑星のかけらが入っていると期待されるカプセルがもうじき(12月)地球に帰還する予定の「はやぶさ2」の話を中心に、仮想的に宇宙を旅することができるソフトウェア”Mitaka”の実演や星の楽しみ方など、2コマを頂いてお話しました。

 

中国からの学生さんが3週間滞在しました。

総研大 天文科学専攻の冬の学校として、中国 武漢大学の学部4年生、ガオ・ウートン(高梧桐)君をRISE月惑星探査プロジェクトで受け入れました。ガオ君は2020年1月11日から29日まで国立天文台 三鷹キャンパスに滞在し、筆者と「はやぶさ2」レーザー高度計データを使って、地形図を作成する研究を行いました。短い共同研究でしたが、地形基準面の考え方や、地図投影法、他の小惑星との比較、論理の組み立てについてじっくり深い議論ができたと思います。初めての海外で、到着直後は大変緊張していた様子でしたが、慣れてくるにつれて積極的に自分の意見をぶつけて来るようになり、小惑星探査のデータ解析手法を貪欲に吸収していました。筆者にとっても、あらためて地形データについて基礎から考え直す良い機会になりました。今回の共同研究で、若い力がすくすくと伸びている中国の惑星科学分野が日本にどんどん迫ってきている事を痛感しました。下に、ガオ君が帰国後に送ってくれたメールの和訳と本文(英語)を、本人の了承を得てコピーします。