水沢局20mアンテナ フィドーム膜交換作業

 11月7日~9日にかけて、水沢局VERA20m電波望遠鏡のフィドーム膜交換作業を行いました。
 フィドーム膜は、主鏡中央に位置し、主鏡・副鏡を反射し集められた天体からの電波が、受信機やそれを載せるステージなどの機器が格納された上部機器室に入る部分にある膜です。上部機器室を風雨から守る強度を確保しつつ、天体からの電波を損失なく受信機に導くため、上下2枚の薄膜の間に乾燥空気を満たし膨らませた、太鼓のような構造になっています。
 今回は、特に日射にて劣化が進む上膜の交換を行いました。観測所の職員4名に加え、外部の業者の方にもご協力いただき、声を掛け合い安全に配慮して作業を進めました。時折雨粒が落ちる天気で、風速は3~5mほど、最高気温11度の観測所の20mアンテナの主鏡上では、寒さが堪える気候ではありましたが、全員が息を合わせて作業を進めました。
 まずはクレーン車で新しいフィドーム膜を吊り上げ、地上およそ20mの主鏡面上に運びます。クレーン車から主鏡面の上は直接見えないため、クレーンアーム上に設置されたカメラやトランシーバーによる誘導で安全に下ろします。その後、設置されていたフィドーム膜を外します。乾燥空気を送るパイプを外し空気を抜き、フィドーム膜を押さえている直径3mのリングに留められたボルトを取外します。外されたリングを鏡面上に人の手で移動し、次にフィドーム膜を張っているリングごと剝がします。固定されていたフランジに残ったコーキングやゴミをきれいに清掃し、またフランジのゴムパッキン(直径3mの円形)を均等な張り具合になるよう注意しながら新しいものに交換します。パッキンを外れないようクリップで仮止めし、新しいフィドーム膜を置きます。上膜と下幕の間に水滴やゴミを残さないよう、天候の変化を見定めてタイミングを計り、しっかりと清掃、除水してから設置します。固定用のリングを載せ、ゴムパッキンの張り具合を再度確認し、クリップを外して、180本のボルトを締めてゆきます。全体のバランスを見ながら、対称的に均等にボルトを締め、すべてのボルトが入った後に、規定の強さでさらに締め付けます。日没時刻となり、雨や夜露の進入を防ぐよう養生を行い7日の作業は終了です。
 翌日、ボルトの締め直しを行い、各部のコーキングに加え、鳥害対策部品の設置、空気充填及び気密試験を行い、さらに次の日に、コーキングの保護塗装や圧縮空気の配管固定などを行い一連の作業を終えました。
 上膜の交換は劣化の程度から5年に1度ではありますが、VERA20m電波望遠鏡は水沢を含め、国内4ヶ所にあるため、5年のうち4年は、この交換作業をどこかの局で行います。アンテナ内部や主鏡の上など普段見ることができない場所で、日々保守点検や交換などの作業が、観測の合間を縫いながら行われていることを、皆さまにも知っていただければ幸いです。(文責:小澤友彦)

作業の様子

クレーン作業準備
 

フィドーム膜吊り上げ準備
 

フィドーム膜吊り上げ(主鏡面上)
 

固定リング取り外しのためのボルト緩め

固定リング取り外し
 

フィドーム膜取り外し
 

外された古いフィドーム膜と固定リング

古いコーキング等除去作業
 

新しいフィドーム膜の包装を解く
 

新しいフィドーム膜設置
 

固定リングを設置しボルト穴の位置調整

ボルトの仮締め
 

ボルトで固定されたフィドーム膜と固定リング

交換を終えたフィドーム膜
 

雨や夜露除けの養生
 

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